0コメント

「意識高い系」の研究 (文春新書)古谷 経衡 を読んだ!(ブラックウッド)

「意識高い系」の研究 (文春新書)
2016101671.jpg
 なるべく1日1更新くらいを目指したいと思います。

 発売してすぐに注文して購入して読みました。

「意識高い系」の研究 (文春新書)
古谷 経衡
文藝春秋
売り上げランキング: 1,200


 はっきりいって古谷 経衡氏のファンです。

 とにかく徹底的に「こんな風に世間で言われているのは何故か?」を調べ上げて迫るのはさすが。



が特に出色。
 「どうして新聞やテレビでは韓国が異常に持ち上げられるのか?」を追求した本なんですが、おおよそ世間で見られている原因とは全く違う「想像を超えた意外な」真相が明らかになる件は一級のミステリを読んでいるかのごとく。

竹島に行ってみた!マスコミがあえて報道しない竹島の真実 (SEIRINDO BOOKS)
古谷ツネヒラ
青林堂
売り上げランキング: 170,940


とか



とか

反日メディアの正体 「戦時体制(ガラパゴス)」に残る病理
古谷 経衡
ベストセラーズ
売り上げランキング: 365,438


なーんて本ばかり書いているので保守系のライターと看做(みな)されがちだと思うんですけど、決してそんなことはなくて、恐らくは「真相を追求しようとしている」だけだと思います。

 新刊が出ればほぼ全て買っているくらいのファンなんですが、今回は「意識高い系」が標的。

その男、意識高い系。DVD-BOX
ポニーキャニオン (2015-09-16)
売り上げランキング: 136,214


 いつもの分析による真相の暴露はなるのか?

 …と思ったんですが、いきなり「リア充」の定義に首をかしげます。「リア充」と「意識高い系」は似て非なるものである(エセであるからこそ過剰にアピールするのが「意識高い系」)という分類は分かりますが。

 要するに「長年その土地に住んでいること」がその条件であると。

 親から自宅や財産を受け継ぎ、その点で苦労していないおおらかさが余裕に繋がっているので、「よそもの」ではなくて「地元民」であることが第一であると。

 …まあ、そういう要素もあるとは思うんだけどなら「地元民」ならば即「リア充」かといえばそんな訳はないわけです。
 代々親の家にいながらひきこもりニートやってる人なんて日本全国万単位でいるでしょう。

NHKにようこそ! 1-8巻セット
大岩 ケンヂ
角川書店
売り上げランキング: 32,496


 もちろんそんな雑な認定はしていないんですが、どうしても「そうかなあそうかなあ」と引っかかりながら読んでしまったので。

 あと、「意識高い系」が自己アピールに忙しく、「見栄えのよいもの」「耳障りのよいもの」にのみ関心を示し、「見栄えの良くないもの」「響きが貧乏臭いもの」を実態とは関係なく忌避する…という話は、まあ面白いし、コラムでその辺をつつくのも笑って読めます。
 …最初のうちは。

 曰く「食べ放題じゃなくてバイキングを好む」とか「喫茶店は駄目スイーツカフェならいい」とか。
 この手のコラムがちょくちょく入ってくるんですが、毎回ネタが同じ。
 「意識高い系想像あるある」で、「あーありそー!」と思って読んでいられるんですが、流石にその手のネタが4回も繰り返されると、徐々に怖くなってきます。

 え…?これってさっきも読んだよね?
 「鍋」が「ラーメン」になっただけで全く同じことを書いてるよね?
 …と。
 そして4回目のコラムで確信に変わります。
 「カフェ」と「スイーツ」が同列に並んでるんですが、途中で折り返してまで同じことを同じパターンで書いているのです。

 なんだか、非日常の世界に入り込むデヴィッド・リンチの映画を観ている様な気がしてきました。

ブルーベルベット(オリジナル無修正版) [Blu-ray]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2012-02-03)
売り上げランキング: 79,123


 そもそも本書自体、言わんとすることは分かるんですが、基本的に同じことの繰り返しです。まあ、手を変え品を変えてわかりやすく解説していただくのはとても丁寧でいいとは思うんですが。

 著者本人が認めるように、「意識高い系」に対して、ある意味小馬鹿にしつつも近親憎悪的なアンビバレントな感情を抱いていることを少しずつほのめかしてはいます。

 「こいつらは確かにみっともないし、嘲笑うべき対象だ。しかしこいつらは俺なんだ!」…みたいな。

 「七人の侍」

七人の侍 [Blu-ray]
七人の侍 [Blu-ray]
posted with amazlet at 17.02.28
東宝 (2009-10-23)
売り上げランキング: 2,516


で三船敏郎演じる菊千代の「こいつは…俺だ!」みたいな。…違うか。

*ここから先は物語の核心に触れますので、ネタバレをしたくない方は本書を買ってお読みください*

 とはいいつつ、実例まで上げて「こんなに痛い意識高い系の実態」まで何例も示すのは流石です。

 「小四サイト偽装事件」とか「セックス・アンド・ザ・シティ女子」みたいな。

セックス・アンド・ザ・シティ (吹替版)
(2013-11-26)
売り上げランキング: 37,487


 「靖国コスプレイヤー」女子(8月15日に和装で参拝した写真をSNSに投稿する女子)をミーハーかつ目立ちたがり屋だと小馬鹿にし、「SEALDs」を持ち上げはしないまでも一定の評価をするあたり、保守系ライターべったりの立ち位置ではないところも見せてくれます。よしあしはともかく。
 やっぱり「対談」とかしちゃうと感じるところがあるんでしょうか。

愛国ってなんだ 民族・郷土・戦争 (PHP新書)
古谷 経衡
PHP研究所
売り上げランキング: 272,224

( 奥田 愛基氏との対談本)

 で・す・が…それらがあとがきの「おわりに」で読者は恐怖のどん底に叩き落とされます。

 別の書作にも溢れている「望んでもなり得なかった」という「リア充」への憧れ転じて怨嗟とか執着とか言うべき思いが遂に爆発します。

 「悔しさが、私の人生の中で大きなテーマだった」と突然言い出したかと思うとなんとこんなことを言い出します。

*****
 しかし絶縁したはずの地元の情報について、なぜそんなに詳しいのかといえば、当然彼らと直接連絡を取り合っているのではなくて、フェイスブックで彼らの名前などを夜な夜な検索しては盗み見るという、盗撮の助平のようなことを恥ずかしげもなく10年近く繰り返しているからである。
*****

 流石に「引き」だと思いました。
 次の段で「まーさか、そんなことしてるわけ無いでしょ」と「落として」くれると思っていたわけです。
 ところがまだ続きます。

*****

そこで現在の自分と比較し、彼らの人生よりもまだ幾分、自分のほうが成功しているのであるに違いないということを確認し、溜飲を下げたい心情に陥るからである。なんという浅ましい根性であろうかと、自分のことながら自分を叱責したくなるのだが、こればかりはやめようがない。

*****

 …え?嘘でしょ…。

 というのが最初の偽らざる感想でした。
 まるで信じていた現実がするりと悪夢に切り替わっていたみたいな感覚です。映画「アイアムアヒーロー」である日突然ゾンビハザードの世界に投げ込まれたみたいな。

アイアムアヒーロー
アイアムアヒーロー
posted with amazlet at 17.02.28
(2016-11-02)
売り上げランキング: 12,601


 そこから突如「子供時代にいじめられた」場面の回想が始まり、「イケメンでリア充」だったクラスメートに「アニメージュを馬鹿にされた」(教室でそんなもん読むなよ)場面の余りにも詳細な場面の回想が始まります。相当脳内で反芻(はんすう)し続けていたんでしょう。

 「いじめられた」という獏とした事実ではなくて、この場面をくっきり覚えているということはよっぽど印象に残っていたんでしょうね。

 ここまでなら、まあわからんこともないです。
 私にも程度を問わなければ似たような思い出なんて幾らでもあります。

 ところが、「現在のそのクラスメート」をフェイスブックで検索して「幸せな人生を送っている」ことに歯ぎしりして悔しがるとなると…ちょっとついていけません。

 これは…なんなんでしょうか。

 いじめられた側は生涯忘れないなんてこともいいますし、気持ちも分かるんですが流石に私とてここまで過去にこだわってません。というか、命の危険のあるような「いじめ」だって幾らでもあるのに、こんなの「桐嶋、部活やめるってよ」の「『映画秘宝』叩き落とし事件」位の話です。

桐島、部活やめるってよ (本編BD+特典DVD 2枚組) [Blu-ray]
バップ (2013-02-15)
売り上げランキング: 4,663


*****

 だから私は最近では、札幌(引用者注:著者の故郷)とか北海道という名前を聞くのも億劫になっているほどだし、つとめてスクールカースト時代の不遇な自分を思い起こさせるような一切の情景をシャットアウトしているつもりなのだが、それでも深夜一人水回りの掃除などをしつつ自分と向き合っていると、畜生畜生という悔しさの炎がめらめらと燃え上がって、何故か無性に茨木方面に自動車を走らせてしまうのである。

*****

 これが「自動車を走らせる」くらいでとどまっていればいいけど…と筆を滑らせたくはなりますがしません。

 著者がどうしてここまで「意識高い系」に執着するのかを説明するのにこれ以上の引用の必要を感じません。

 そして私は「そんなこともう忘れなよ」とは言いません。

 むしろこのコンプレックスを創作意欲に変えて、今度はフィクションで大傑作をものにするのがいいんじゃないでしょうか。

八つ墓村
八つ墓村
posted with amazlet at 17.02.28
(2016-10-05)
売り上げランキング: 5,009


 ここまでこじらせた人は、「創作物」で昇華するしかないと思います。
 きっとスティーブン・キングもかくやというような大傑作を生み出してくれるんではないでしょうか。その時に何かの文学賞のトロフィーでも握り締めて故郷に凱旋するというのが理想のハッピーエンド…だといいんですけど。
 どうでしょうか?

 色々な意味でとても面白かったです。おすすめ。

ヘンリー・ダーガー 非現実を生きる (コロナ・ブックス)
小出由紀子
平凡社
売り上げランキング: 40,586

この記事へのコメント