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AURA 魔竜院光牙最後の闘い に観るオタク論(ブラックウッド)

AURA 魔竜院光牙最後の闘い [レンタル落ち]
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 田中ロミオ原作の80分の劇場アニメ。
 原作小説こそありますが、テレビシリーズやOAVなどを持たず、これ一本で完結する作品です。

AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~ (ガガガ文庫)

 結論から言うと大変満足しました。
 ハッキリ言っておススメです。

 おススメであると同時に非常に色んなことを考えさせられる佳作となっています。
 決して「歴史に残る大傑作」と言う訳ではないし、オリジナル(ここではテレビシリーズが無いと言う意味)の単品劇場用アニメという媒体の特殊さなどから、敢えてレンタルDVDなどを借りて視聴する以外に目に触れる機会が無いでしょうから、将来に渡ってマイナーな立場は変わらないであろう作品でもあります。
 後述する理由などから、地上波の映画枠でのテレビ放送などにもまず恵まれないでしょう。

 しかし、出来たらすれっからしのアニメファンにも見てほしいです。
 そう思わせてくれる(個人的には)愛すべき作品です。

 タイトルが物凄いんですが、実は「超自然的なこと」は劇中では何も起こりません。
 異世界から召喚された戦士たちが戦ったりもしないし、主人公もヒロインもごく普通の人間です。

 公式サイトよりあらすじを転載します。
http://www.marv.jp/special/aura/index.html

*****

佐藤一郎は「普通」の男子生徒として、高校デビューに成功したはずだった。
ある晩、忘れ物を取りに行った学校で不思議な女の子“青の魔女”と出会い、
彼の教室での立場は大きく変わってしまう。
魔女の正体は、一郎のクラスメート・佐藤良子だったのだ。
彼女は本物の魔女なのか?それともただのコスプレ女子なのか?
さらに涼子に触発されて、クラスに潜伏していた<妄想戦士(ドリームソルジャー)>
たちも次々と名乗りをあげ、一郎を巻き込んでいく…。

*****

 多くの方がこの文章を目にする頃には劇場公開も終わっているでしょうから、視聴の機会は極端に限られると思われます。原作小説は本屋さんに行けば置いてありますが、この作品こそ「アニメで観ることに意味がある」作品ですので、ぜひアニメで観てください。

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 ここから先は一部核心に触れる「ネタバレ」になりますが、ご容赦ください。
 すぐれた作品は、全てあらすじを知っていてすら視聴することに何ら価値を毀損しないと信じます。

 主人公、佐藤一郎は「厨二病を卒業した」と自認する元・いじめられっ子。そして、問題のヒロイン佐藤良子は異様な風体で学校に通い、ほぼ普通の言動を行わない重度の厨二病患者です。

 最後に至っても「厨二病」故の騒動を引き起こすものの、一郎による全てをさらけ出した告白によって「身を守るために精神的に閉じこもって」いた言動から決別し、『改心』することで結末となります。


・娯楽の価値は

 これを読んで「そんな話を態々(わざわざ)金を払ってアニメで観て楽しいか?」というアニメファンも多いでしょう。
 タイトルと、主演の花澤香菜さんに惹かれて筆者を誘ってくれた知人もそういった意味のボヤキをもらしていました。

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 内容的にも非常に説教くさい話で、直接説教はしませんが一郎の「厨二病的な言動は精神的甘えなんだからいい加減にやめろよ!」(大意)という激昂シーンもあって、非常に見ていて心が痛いアニメではあります。
 「説教臭さ」というのはあらゆる劇映画に付いて回る問題で、どうしても製作者は上から目線になりがちです。

 確かに、非常に「飛躍」の無いお話です。
 それどころか、地べたを這いずり回る様な「観ていて精神的に辛い」展開が続く“胃の痛くなる”アニメでもあります。
 劇中で、コスプレで学校に通い、意味不明の言動を全く改めない良子は“いじめ”の対象となります。

 履物はしょっちゅうなくなり、机には落書きされ…と言う具合。

 そして、この頃日本でも脚光を浴びてきた「スクールカースト」が執拗に描かれます。

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 「イケてる」グループは「底辺(オタク)」グループを見下し、お互いに会話すらありません。
 当然、「いじめ」の主導権を握るのは彼ら彼女らであり、最後まで和解しません。

 恐らく“娯楽”として正しいのは、『実は超自然的な力を持つ、異世界から召喚された戦士だった主人公が、その隠された力を発揮していじめっ子グループを懲らしめる』展開でしょう。

 ゴールデンウィークということでアニメ映画のはしごをしたのですが、よりによってと言いますか直前に見た映画がこれまた「厨二病」作品の代表みたいな「シュタインズ・ゲート」でした。

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 意図した訳ではないでしょうが、見事に「AURA」を裏焼きした様な展開のアニメです。
 常に都合のいい妄想をつぶやきまくる主人公の周囲にはタイムスリップあり、未来からやってきた戦士あり、第三次世界大戦後の世界がありと正に(両方の意味での)「絵空事」が広がるのです。

 娯楽としての飛躍と言う意味では「シュタインズ・ゲート」の方がずっと正しいでしょう。

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 この「ストレスの解放」が出来るのはフィクションならではです。
 確かに「都合のいい妄想」には違いありません。ここに「アニメ」という要素が加わった日には「厨二病」「マニア」「オタク」と蔑(さげす)まれることもあるでしょう。

 ただ、「絵空事で視聴者の溜飲を下げる」という意味で言うならば「勧善懲悪の時代劇」などは正にそれそのものです。

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 「水戸黄門」「大岡越前」「必殺仕事人」などは、途中までは悪代官や大商人に代表される“悪役”が憎々しげに無辜の一般市民を痛めつけ、時には殺したりして視聴者は切歯扼腕するものの、ラストに至って「正義の味方」がぴしゃりと悪を退治して一件落着…というパターンを飽きもせず毎週毎週毎週毎週繰り返しています。
 一部の刑事ドラマや探偵ものなども同じことが言えるでしょう。

 誰も変身しませんし、怪物も超能力も出てきません。
 しかし、ある意味これほど現実感の無いお話も無いでしょう。

 「誰が見ても分かる悪」を「万能の正義の味方」が退治して気持ちよく世の中が良くなるお話と、超能力バトルの現実度合いはそれほどレベル差はありますまい。
 とはいえ、そうした物語は「観ていてバカバカしくならない」工夫はなされています。

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 幾ら現実度合いがそれほど大差ないからと言って「超能力」「生まれ変わり」「異世界」などを出してしまえば一気に物語が「絵空事」になってしまいます。
 ただ、ならばそうした「オタク」系作品がどうして成立し、一定のファンを獲得しているかと言えば、所詮は観る人間の「リアリティの基準」がより幅が広いという「個人差」にしか過ぎないと思います。

 ぱっと観て、「バカバカしい」と感じるならば、あなたはその作品の引くリアリティの基準とあっていないと言う程度のことでしかありません。その作品が「非現実的だから程度が低い」ことにはならないのです。

 多くのアニメファンがそうであるかどうかは分かりませんが、オタク第二世代としてもうすれっからしの筆者からしてみると、必然的に「アニメと言う枠組みそのもの」に自己言及的なスタンスの「AURA」はすんなり入ることが出来る作品でしたね。現時点の自分自身の価値観と近いので。

AURAアウラ魔竜院光牙最後の闘い 1 (少年サンデーコミックススペシャル)

 「超自然的な要素が全くない」から飛躍が無く、説教臭くて面白くないというアニメファンはあと10年後に観ると面白いんじゃないでしょうか。


・「厨二病」というモチーフ

 この頃急激に注目されてきた「厨二病」というキーワードですが、要するに「オタク」の言い換えと言って間違いはないでしょう。

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 無論、この用語そのものの定義があることは知っていますが、劇中に於いては「オタク」と呼ばれることとほぼ同義です。

 実は「AURA」は劇中で「厨二病」という用語そのものは使っていないのですが、主人公はかつては厨二病患者だったことを自認し、コスプレで学校に通い、自らを「リサーチャー」などといかにもそれっぽい用語で呼ぶ良子に近親憎悪めいたものを感じています。

 「今の自分は仮初(かりそめ)の姿で、両親も偽物であり、本当は生まれ変わった異世界の戦士」というかつての一郎の『設定』を聞くとオタク第二世代くらいまでの人間が思い出すのはやはり「僕の地球を守って」でしょう。

ぼくの地球を守って 1 (白泉社文庫)

 何という素敵なタイトルでしょうか。
 ともあれ、ごく平凡な高校生たちのはずだった主人公たちは実は転生した後の姿で…という魅惑的な設定は多くのフォロワーを産み、一時期雑誌の投稿欄には全国各地に散らばった「仲間」を呼び集めるためのメッセージが溢れた…とされています。
 中には「もう一度転生するために」と集団で飛び降り自殺をした例もあったなどと報道されました(AURA劇中でも良子は居場所のない現実に絶望して自殺しようとします)。

AURAアウラ魔竜院光牙最後の闘い 2 (少年サンデーコミックススペシャル)

 こう書くといかにも「ぼくたま」(ファンはこう呼ぶ)が原因で一連の騒動が引き起こされたみたいですが、実際には因果関係は複雑です。
 そもそも作者が雑誌投稿の読者ページの余りにも異様な一連の傾向を見てストーリーを思いついたというところがあるので、鶏と卵の様な関係です。

 当時そんな用語はありませんが、正に「セカイ系」妄想のとりこというところです。

セカイ系とは何か (星海社文庫)

 オタク的な創作物に耽溺し、それらの持つ現実性の希薄さ(だからこそ魅力的だったりするのですが)に引きずられる形で「現実世界」と折り合えない主人公はいかにも「現代的」に見えます。

 しかし、実は「現実の余りの辛さに妄想世界にあこがれる」物語は世の中に沢山あります。この作品は“たまたま”厨二病をモチーフに使っただけであって、モチーフは別に何でも構わない訳です。

 個人的には「厨二病」をモチーフに使ってしまったが為に、一般人にもアピールする「普遍性」をごっそり失ってしまったのは残念に感じないこともありません。
 とはいえ、「アニメならでは」の展開にもできましたし、どうせ一般人はアニメ…それもオリジナルのアニメ映画なんてまず観ませんから、「アニメファン向け」に作るのは正解だったでしょう。
(一応この原稿を書いている時には「君の名は。」は公開前でしたけど、基本的な認識は変わってません)

 こう書くと「アニメを馬鹿にするな」という声が聞こえて来そうですが、一般人が観るアニメなどジブリか

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細田守監督の映画
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がせいぜい。あとはディズニーとか「トイ・ストーリー」
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みたいなピクサーの3Dアニメくらいです。
 下手すりゃ細田アニメすら「オタクっぽい」と敬遠されそうです。キャラがエヴァに似てるしね(えー。

 第一「一般人」の皆さんはそのディズニーだジブリ映画だのを観ても「面白いな」以上の感想なんて滅多に持ちません。普通の方は実写映画なんて10回みても主役の役名も覚えていないでしょう。そんなもんです。

 「AURA」が素晴らしいのはこの頃の「ゲージュツ」気取った演技素人起用の「単なるオタク向けアニメではない、一般人の鑑賞にも耐えうるアニメーション作品」(けっ!)と違って、現役バリバリの声優さんたちを起用し、誤解を恐れずに言えばいかにもアニメ臭く、オタク臭いキャラクターデザインで描き切ったことです。
 まあ、だからこそ一般人を遠ざけてもいるんですが…。


・飛躍アニメと現実アニメの狭間(はざま)で

 無理に用語にしましたけど、「飛躍アニメ」というのが現実から飛躍のある、超能力だの異世界だのが跋扈するアニメであり、「現実アニメ」というのがそうしたものが一切登場しないアニメです。

 とはいえ、「学園もの」が超自然的な要素が無いからといって「現実的」かというと全くそんなことはありません
 要するに「現実の臭み」を脱臭したある種のファンタジーであるかないかということです。

 例えば「けいおん!」は別に超自然的な要素は何も出てきませんが、紛れもないファンタジーです。

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 別に「大して練習してないのに演奏が上手い」といった次元で話しているのではありません。

 よく指摘されますが、主人公の平沢唯・憂姉妹には劇中に「両親」が登場しません(実は漫画版には少しだけ出る)。

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 多くの日本製アニメは主人公がローティーンの子供であるにも関わらず「両親」が出てこないのです。
 簡単に言うと「描くと描写がいかにも所帯じみて(現実味がありすぎて)しまうので面倒くさい」から省略してしまうんですね。
 だから、平沢姉妹はどうやって生活しているのか全く分からない謎の自給自足生活を送っています。

 よく「何も起こらない」などと揶揄される「けいおん!」ですが、もしもリアルに女子校の女子高生バンドライフを描いたらもっといろいろあるでしょう。

けいおん!  college (まんがタイムKRコミックス)
*作者の絵柄もアニメ寄りになって大学に進学した四人組が描かれる続編。いい意味での相変わらずぶりでこの調子で描き続けていればあずにゃんたちの高校生編と合わせてアニメ3期も楽勝だったでしょうにぷっつり終わってしまいました。残念。

 別にいじめられるのを描けとまでは言いませんが、些細な行き違いくらいはあってもよさそうなのに、彼女たちは結局一度も葛藤することなく卒業します。
 「現実」と向き合わなくてはならない最大のイベントである「進学」も半ばギャグの様に処理されてしまいます。

けいおん!  highschool (まんがタイムKRコミックス)

 どこかの雑誌で読んだのですが、登場人物の一人である「秋山澪」の真っ黒で長い髪は「あんな(綺麗で)長い髪の女子高生なんて全く現実味が無い」のだそうで、恐らく同年代の女子高生であろう投稿者が無茶苦茶に怒っていました(長い髪はとにかく手入れが大変なのだそうで)。
 なるほどそう言われてみればそういう点も、非常に細かい「ファンタジー」ですね。
 別に肩に妖精を乗せていなくても「ファンタジー」要素はあるのです。

 かの「新世紀エヴァンゲリオン」ですら綾波レイの髪の毛は青い色だったのに、

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「けいおん!」の女子高生たちの髪はみんな真っ黒かせいぜい茶色でした。しかしその中でも、金髪の子はいた訳で、なるほどファンタジーではありますね。

TVアニメ「けいおん!」劇中歌ミニアルバム 「放課後ティータイム」

 いつ勉強しているのかさっぱりわからん色とりどりの髪の毛の女子高生たちがきゃっきゃうふふして、貧乳ネタやかるく百合っぽい展開でいちゃいちゃしている“だけ”のアニメは筆者の定義では「現実アニメ」とは呼べません。

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 別にこれは「だから悪い」と言ってるんじゃなくて、「現実アニメ」じゃないってだけの話なのでそのへん誤解なきよう。

 「AURA」が仮により目を小さくし、演技にも抑制を効かせて所謂(いわゆる)「アニメ声」でしゃべるキャラが一切登場しないトーンで描かれていたならば「現実アニメ」の体裁を最初から整えていたでしょう。

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 しかし、この次に書く通り、であるからこそとある「仕掛け」が効いてくるのです。


・アニメと言う構造そのものによる「仕掛け」

 「AURA」は見た目がいかにも「この頃のアニメ」に見えます。はっきり言えばオタク系というか。

AURA~魔竜院光牙最後の闘い~ 設定資料集 監督 岸誠二 声 島崎信長
AURA~魔竜院光牙最後の闘い~ 設定資料集 監督 岸誠二 声 島崎信長

 オタク系でないアニメというのは、それこそ昔には夏ごろになると放送されていた戦争反対洗脳アニメとか、外国の映画祭で賞を取って来る「感動の」アニメとかああいうのです。
 今敏(こん・さとし)監督作なども受け止められ方だけを言うならばそうですね。少なくとも萌えアニメではない。

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 少なくとも、これらのアニメは「アニメそのもの」が持つ機能としては「実写作品」に非常に近いですね。
 外見からして「超自然的なことは起こらないだろう」と思わせてくれますし、仮に起こったとしても余りのギャップにバカバカしく見えることでしょう。

 ところが「AURA」は外見が「オタク系アニメ」です。

AURAアウラ魔竜院光牙最後の闘い 3 (少年サンデーコミックススペシャル)

 「とある何とか」シリーズにまんま登場しても不可解(おか)しくない外見のキャラクターたちがいかにも厨二病的なことを喋りまくるのです。

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 主人公である一郎自身が最初は良子の言動に合わせたりしますし、劇中でミスリードを誘うために3か所ほど「超自然的」(に見える)描写があります。

 ですから、私は劇場でこの映画を観ながら、コスプレ同然の格好で良子が登校してきて周囲から浮いている際にも、一観客として「ふふふ…実はその子は普通の人間ではないのだよ…」と優越感に浸っていました(アホ)。

 しかし、物語がいくら進んでも一向に「超自然的」な現象は起こりません
 それどころか、良子は周囲から浮き続け、深刻ないじめ被害がエスカレートし続けます。
 それでも全く「厨二病」的な言動をやめない良子に対し、観客としては猛烈に不安になってきます。

「この子はもしかして本当にキチガイなのではないか?」 

 と。
 ちょっと過激な言葉を使いましたが、筆者としてはこの表現がしっくり来ます。
 多くの観客は途中から単に妄想が激しい子であるということで落ち着いたみたいですが、それにしても人間らしい反応を殆(ほとん)ど見せないので、不安になってくるのです。

 実はこの構造を取った場合、メタレベルでの「ギャップ」は二種類あります。

「この(このアニメの)世界では超自然的なことは起こらない」

 というのがまず第一点。恐らく多くの観客にとってはここが一番問題になるところでしょう。
 もう一点が

「良子が正気なのかどうか」

 です。
 劇中の現実レベルが超自然的なものを許容しないのは分かったけど、だとすると良子が信じている現実はどっちなのか?ということです。 

 少なくとも筆者に関しては、最後の瞬間に至るまで「良子が「覚醒」していじめっこを惨殺する」展開が到来することを信じて身構えていました。
 これが出来るのは少なくとも「オタクアニメ」っぽい見た目のおかげでしょう。

 「現実アニメ」だったら早々に「何も起こらない」ことを納得できたでしょうし、実写だったりすれば尚更です。
 正に「オタクアニメ」だったからこそ出来る「仕掛け」だったと言えるでしょう。


・夢にあこがれる展開

 「生きにくい現実世界を否定し、オタク的妄想世界に精神的に依存する」良子というキャラクターは既に「痛い」というレベルを超えています。

 「痛い」という言い方や、そもそも「厨二病」という表現をとっても非常に自虐的です。
 自虐的というのは、ある種自分自身を突き離して客観的に見られるからこそ出て来る価値観ですから、そういう表現が出来る時点で、それなりに「安全」ということは出来るでしょう。

 しかし、「セカイ系妄想」と「現実」が同レベルで混濁し、時には「妄想」が勝ってしまう様になると「危険」です。

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 よく言われる「現実と非現実の区別がつかなくなった」状態ですね。
 単に思い込んでいるだけならいいのですが、自殺してしまったり、大量殺戮を始めたりするとえらいことです。

 映画「マトリックス」

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に影響されて「今見えているこの世界は現実ではないのだ!」とアパートの管理人を本当に殺した事件がアメリカではあったそうです。この他にも似たような事例は幾らでもあるでしょう。

 こういう“現実逃避”の行き付く果てに「アニメ・漫画・ゲーム」的な世界観に憧れるという登場人物像はいかにも「現代的」で、それこそ「オタク的」に“見えます”。

 ですが、かなり普遍的な物語形式でもあります。

 妄想に近い憧れが「適いました」というお話は「おとぎ話」には枚挙にいとまがありません。

 「シンデレラ」などは正にそうですし、「ピノキオ」などもそうです。
 「醜いアヒルの子」などは「いじめられっこだった醜い存在が、実は美貌を兼ね備えた選ばれた存在だった」などという、見様によっては鼻持ちならないご都合主義の結末です。だからこそおとぎ話なんですが。

みにくいあひるの子 (アンデルセンの絵本)

 「厨二病」というよりは「邪眼(じゃがん)」「邪気眼(じゃきがん)」と呼ばれる症状に似ていますね。

*****
ニコニコ大百科より

2006年2月12日に2ちゃんねるのニュース速報板(v速板)内に立てられた『過去の失態を告白してみんなで奇声を発するスレ』が全ての始まり・・・。ちなみに本人のイメージは幽々白書の飛影だったらしい……。
上記のような痛々しい想像を言うが、ヒーロー願望のある思春期の少年ならこの程度の想像は誰しもしたことがあるだろう。それくらいは中二病で済まされるレベルである。

しかし、現実と想像の一線を越え、実生活で想像の設定や特殊能力を周囲に語ったり、思わせぶりににおわせたりし始めると妄想となり・・・く、くそっ・・・完全に・・・邪気眼使いとして覚醒している!!
*****

 筆者は「AURA」を観て感じたのは、先日亡くなった大島渚監督の「少年」に似ているな、ということでした。

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 貧乏であるため、家族ぐるみで当たり屋をさせられている少年が、いつかアンドロメダから宇宙人が救いに来てくれることを夢想するという筋立てです。
 まんま「AURA」での良子、そして「厨二病」時代の一郎と同じです。
 勿論、どうみても貧しい現実そのものの中で「救い」として「救済」を求める少年と、現実社会の居場所の無さから「救済」を求めて妄想するのとでは違いはありますけど。

 別に類似性を「パクりだ!」などと糾弾したい訳ではなくて、よくある普遍的な筋立てであることを知っていただきたかっただけです。

 かつての一郎と現在進行形の良子は、共に「妄想が激しい」ことで周囲との軋轢を起こし、結果として孤立してそれによってより激しい妄想をし、更に軋轢を拡大させます。

AURAアウラ魔竜院光牙最後の闘い 4 (少年サンデーコミックススペシャル)

 正に悪循環なのですが、ならば彼ら彼女らが最初から「一般人」「イケてる」グループに入れたかと言えば入れなかったでしょう。

 オタクたちは自分に正直に生きている…というと格好が良すぎますが、普通に好きなものを好きと言っているに過ぎません。
 ただ、多くの場合容貌魁偉で異様な雰囲気を漂わせることも確かです。
 何よりマイノリティなので肩身が狭いです。

 劇中で多くの観客がまだこの作品の「現実レベル」を掴みかねていた段階で、「魔法のアイテム」的に取り出した物体が、単に幼女用アニメのグッズであり、それによって変態オタク扱いをされる展開の痛々しさなどなまじこのアニメそのものの絵柄がオタク的であるために身につまされるものがあります。

 「AURA」はことほど左様に「現実」との折り合いに言及し続けます

 では最終的に何が言いたいアニメなのでしょうか?


・オタク的なものの「評価」

 「通過儀礼」とは、バンジージャンプなどが代表ですが人工的なイベントによって過酷な体験をし、精神的にも一旦自分が死んで再生するという経験を通して「大人になる」ためのものです。

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 ところが、多くの現代人は筆者も含めて「通過儀礼」を経験しないまま、年齢だけは重ねてしまっています。
 肉体的には「年を取った子供」ではあるけども、精神的には「大人」ではありません。

 「大人になる」ことが何を意味するのかは完全には分からないのですが、その要素の一つとして「非現実であるものに過剰にのめりこまない」ことはあるでしょう。或いは「非生産的」とか「現実の役には立たない」と言い換えてもいい。
 子供の頃は徹夜でRPGの「経験値稼ぎ」をしていても、それに「意味」を見出すことが出来ていました。ぶっちゃけ筆者もやってました(爆)。

ドラゴンクエストII

 しかし、いつの間にか「幾らでもやっていい」状態である大人になり、ソフトも買える程度の小金なら余裕で持っているシチュエーションになっているのにゲームをする気持ちに全くなっていなかったりします。
 子供の頃なんて、新しいソフトが最初に起動する瞬間のドキドキなんて筆舌に尽くしがたいものがあったのですが、今や未開封ソフトまである始末
 買っても殆(ほとん)どやらずに放置しているソフトも含めると膨大です。

 絵空事そのものである「アニメ」なんぞその最たるもので、大半の人間は小学校と同時に卒業します。大人になってまで観るなどありえません。
 いや、観ることそのものはあるでしょう。
 ただし、子供の頃と同じレベルでのめりこむとなると問題は深刻です。

 とはいえ、そうした人間たる「オタク」が増えてきたこともまた事実。
 近代に初めて登場した層に我々はどう対応して来たか。そもそもオタクたち自身はどう行動して来たのか。

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 一応補足しておきますと、「青年期」というものを人類が獲得したのはごくごく最近です。といっても戦後くらいですが。
 原始時代の人類の寿命は四十歳に満たなかったと言われています。十五歳にもなれば「元服」「裳着」といった「大人となった」ことを証明する儀式が行われていましたから、生殖行動が出来る状態となれば「大人」と考えられていたと言えるでしょう。
 ところが現在は、肉体的には子孫を作ることが可能となった時期を経過しても、「社会に出て働く」までの時間が空いてしまっているため、「大人でも子供でもない」時期が出来てしまいました。
 これが「青年期」です。

 日本ほどアニメ・漫画といった「青年期」にしっくりくる創作物が充実している国は無いと言います。

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 創作物と言えば乳幼児の観るアニメか、大人の見る実写しかないのが世界中の多くの国のスタンダードです。

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 しかし我が国においては、中高生になっても見られる「アニメ」があり、特撮があります。
 果ては高校・大学生、そして果ては「アダルトでない」大人向けの「アニメ」まであります。
 ある意味において非常に歪(いびつ)だと言えるでしょう。だからこそ存在意義があり、代替する存在が無いために珍重され、世界中で受けている訳です。

 この「青年期」「学生時代」が生み出され、そこを当て込んだ創作物が市場を形成し、遂には「通過儀礼を経ない」「年を取った子供」が登場し、遂に「オタク」層が生まれます。
 「オタク第一世代」は二つ上の「全共闘世代」、一つ上の「シラケ世代」の次くらいに位置します。
 正に「価値観が一周した」状態です。

 オタクを世代で分けるのはこの頃は研究が進んでそぐわなくなってきているとは思いますが、少なくとも第一世代においては「自分がオタクであること」には非常に自覚的でした。
 それこそ「プロレス」の様に「敢えて騙されて楽しむ」様なところがあったのです。

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 これが「第二世代」と「第三世代」くらいになると、「いい年こいて“本気で”」アニメにのめりこんでいる層が出始めます。
 説明が難しいのですけど、社会的な地位も名誉もあるのに“本気”でのめりこんだ訳です。これは単に「凄くアニメが好き」とかそんなんじゃありません。

 オタク第一世代は、アニメにはまるのは「恥ずかしいこと」という認識そのものはありました。
 だからこそ「漫画を読む」「アニメを観る」ことに「理由」が必要だった訳です。
 過剰な学術用語で装飾された「ガンダム評論」だのサブカルチャーがどうした世代論があれこれと必死に「理論武装」していないと耐えられなかった訳です。

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 ですから、「第二世代以降」が「好きだから好き」という素直ではあるけど、世間に顔向けできないこっ恥ずかしい態度であることが信じられない訳です。
 この辺りの屈折した心理は「オタク第一世代」のクリエイターによって生み出された「新世紀エヴァンゲリオン」には濃厚に漂っていますし、そのファンたちの接し方などを観ると如実に分かります。

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 第一世代は青年期に「機動戦士ガンダム」に嵌(はま)った世代で、「新世紀エヴァンゲリオン」を作った世代。第二から第三世代の真ん中くらいに「エヴァ」が放送されています。

 ちなみに今もって未完の問題作「新世紀エヴァンゲリオン」の影響は計り知れないのですが、「セカイ系」ジャンルを成立させたという功罪があるのは記されていいでしょう。

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 OAV「おたくのビデオ」は

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正にオタク第一世代を描いたアニメですが、漫画・アニメ「げんしけん」

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オタク第三世代を描いています
 同じオタクと言っても全く違うので見比べられると面白いと思いますよ。
 第二世代オタクとして目からうろこだったのは、この頃のオタクはオタクであることに全く屈託がないのです。

 1989年の「宮崎事件」をリアルに経験している世代としては「オタク=人殺し予備軍」であるという迫害の歴史でした

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から、あっけらかんと一般人同士でエヴァンゲリオン語るなんて自殺行為にしか見えません

 度を超えて趣味にのめりこむと言う意味では、オペラのマニアなどは古今東西凄まじいものがありますし、歴史のある鉄道マニアや、SFマニアなどもいます。

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切手の収集家やシャーロキアン(シャーロック・ホームズのマニア)などもいます。

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広く言えばミステリや冒険小説の熱狂的なファンなどもそうでしょう。
 これらは広く「大人の趣味」として認められているのに、ことアニメや漫画となると一気に「反社会的」なものであり、存在そのものが犯罪であるかのごとく扱われかねません

 少なくとも「精神的に幼く、幼稚である哀れな人間どもの集まり」みたいな取られ方をされがちです。今もニュースバラエティなどで取り上げられる「オタク」特集はそうした視点で「上から」「半笑い」のスタンスで扱われます
 下手すると「地域おこし」「聖地巡礼」などで押しかけたオタクを「薄気味悪い迷惑集団」みたいに報道したりします。実際は大人しくて礼儀正しい(コミュニケーションが下手なことの裏返しなんですが)オタク集団は、見た目こそ垢抜けず不気味ではあっても金離れもよく、地域住民の皆さんには歓迎されていたりするのにです。

 そして、忘れてはいけないのは「一般人」からするとオタクは「ダサい」ものであり、最も「生理的に受け付けない」「唾棄すべき存在」であるとみなされているという辛い現実です。
 マスコミに登場するのが「コスプレ」「メイド喫茶」「男の娘」といった見た目に分かりやすいものが多いことも影響があるでしょうが。

 結局、「オタク的なこと」をモチーフとして扱う時点で、そうした「余計な雑音」が吹き込んでくることは必然でした。「AURA」はオタク、厨二病的なモチーフでなくても十分成立したと思います。
 ですが結局そのモチーフで描くこととなりました。

 結論を急ぐ前にもう少し回り道します。


・そうした価値観の肯定か否定か

 さて、ところがここにややこしい価値観が流入してきます。
 それが「自分らしさ」なるものの全肯定風潮です。

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 同時期に公開された「劇場版シュタインズ・ゲート」はそうした価値観の「大肯定」作品です。

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 非常に痛々しい言動を取る主人公の岡部倫太郎は、オタク仲間であるダルにすら言動を疎ましがられ、それ以上に厨二病であるフェイリスには設定が甘くてついていけないという非常に情けない存在です。

 しかし、最終的に世界を救う(ということにしておきます)のはその妄想であり、ゲーム・テレビアニメのクライマックスでは迫りくる現実に素に戻っていた岡部が「自分らしさを取り戻し」て厨二病全開となって盛り上がるのです。

 ある意味全編通して一番の見せ場であるこのシークエンスは鳥肌が立つほど興奮もので、正に「このままでいいんだ!」と勇気づけてくれるものでした。その判断が本当に妥当なのかどうかはさておくとして。


 ちなみに「新世紀エヴァンゲリオン」は「今の自分はこのままでいいのか!?」というのがメインテーマで、そこはオタク第一世代らしくどちらとも結論を出せないまま未だに悶々とし続け、新作だの続編だのが出るたびに結論が二転三転して全く要領を得ません
 要するに「迷い続けている」というところなんでしょう。

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 少し前に「オタク」を扱ったエポックメイキングな作品がありました。
 それが「電車男」です。

電車男

 発表から同時に「純粋培養された男女のラブストーリー」という要素“だけ”が注目されたのか、同時に七つの漫画化がなされ(!!)、映画そしてテレビドラマにもなりました。

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 概要を知っている方は多いでしょうけど、「結末」までご存知の方は意外に少ないのではないでしょうか。

 電車内で酔っ払いにからまれていた美女を、蛮勇を奮って助けたオタクくんがその美女と逢瀬を重ねるうちに…というお話ですが、面白いのは「電車男」が相手方の女性である通称「エルメス」とのやりとりを逐一スレに報告し、住人達が盛り上がるということ。

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 現在では「創作疑惑」などもかまびすしく、発表当初ほどは純粋に楽しめないと思います。

封印された『電車男』 (Love & Peace)
*「電車男」騒動の裏側が読める書籍。これに限らず安藤氏の著作はどれも面白いのでオススメ

 ただ、メジャーな映画やテレビドラマなどで一流有名タレントなどが演じたこともあり、知名度は非常に高い作品です。
 筆者も当時の実況スレなどの様子を覚えていますけど、観ながら盛り上がろうと頑張ったのに余りにも人が殺到してサーバダウンする有様でした。

 同時期に「トリビアの泉」というバラエティ番組(放送されていた時期だったんですね!)

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で「オタクは酔っ払いにからまれている女性を助けるのか?」という実験をやったところ、驚くべきことにほぼ100%が助けに行くことが分かりました(現在のスレた感性で考えるとやらせだったんじゃないかという気もしますが…)。
 なるほど女性にウブな「電車男」を応援したくなる気持ちは良くわかりますし、正にそういう風に作られた作品です。

 ところが、「オタク告白」をした後の電車男は、最終的にエルメスに合わせる形で「オタクを卒業」してしまいます。

 この辺りが論争を呼んだところで、結局のところ「電車男」の中では「オタク趣味」は「卒業すべき過去の汚点」という扱いをされていることが分かります。
 筆者も「電車男」のエピソード群についてはその真偽に関しては懐疑的です。
 100%創作ではないにしても、かなりの程度創作であろうと思っています。

 特に「実は電車男自身は性格的にはオタク的とされる特徴は備えているが、趣味としてそれほど熱心にアニメを観たりフィギアを集めたりするオタクではない」という説に賛同です。(安藤健二氏の「封印された「電車男」」参照)

 エルメスへの告白を経て精神的に成長したという解釈もあるでしょうが、そんなに簡単に捨てられるならば苦労はしない訳です。そもそもオタクの趣味が忌避されるのは「度が過ぎる」ことに尽きるのであって、分を弁えていれば相手方の女性も無下にパートナーの趣味を全否定はしないでしょう。

 別にどんな結末になろうと作者の自由ですが、「オタクを扱った代表作品」とされる作品の結末が堂々たるオタク趣味否定というのはちょっと驚きます。


・心はいつも中学生作家

 仮に精神的に寄りかかる対象であった趣味との決別を「通過儀礼」と位置付けるのであれば「電車男」の展開も一応の説得力は持たせられます。
 そうなると、正に「テーマを語る道具」として「オタク趣味」をしゃぶり尽くしたに過ぎないとも取れます。

 ところがこういった「趣味」を真正面から全肯定する作家がいます。

 SF作家にして、「と学会」元会長の山本弘(やまもと・ひろし)氏です。

 筆者も作品のファンです。「神は沈黙せず」

神は沈黙せず
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山本 弘
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の衝撃のラストは、自分で言うのはこっ恥ずかしいでしょうから筆者が代わりに言いますけど「いよっ!和製イーガン」の掛け声を掛けたくなる物凄さ
 「SFは絵だねえ」の名文句と共に額に飾っておきたくなる脳内ビジュアルショックです。ラストに関わってくるので説明できませんけど、とにかく一読をお勧めします。

 膨大な知識と情報を駆使して紡ぐ「思考の果て」に行きつくトンデモ結末やら、実験的作品の数々は瞠目(どうもく)に値します。
 筆者の観るところ、非常に誠実なSFを書かれる作家さんで、「ヘンな結末」だけを目的としているのではなく、「どうしてそうなったか」を全部きっちり説明してくれるので、「思考実験」として楽しむことが出来る訳ですね。

 まあ、諸作品が巻き起こした論争やらご本人の政治的スタンスを巡る舌禍事件などもありますが、作家は作品が面白ければいいのです!
 この山本氏は「いい年こいて漫画・アニメに夢中になっていて何が悪い!」と公言するオタク第一世代の論客でもあり、小説の中でもたびたび主張します。
 娘もいる立場でロリコンを自称し、作品を擁護する壮年というのは何とも凄まじい覚悟を感じます。

 特に顕著なのが「アイの物語」という短編・中編集。

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 登場する人物の多くが所謂(いわゆる)「オタク」たちで、世の中とのコミュニケーションが取れずに苦しい立場に置かれています。
 しかし、物語全体のトーンとして「素晴らしいオタク趣味」が真正面から肯定されており、読みようによっては気恥ずかしささえ覚えます。

 正直、筆者も間違いなくそうしたものが好きですから、アニメや漫画に「生理的嫌悪感」などは全くありません。
 どちらかというと擁護に回りたい方ですけど、流石にここまで真正面から肯定されると違和感があります。


・結論。アニメ映画「AURA」はきちんと落とし前をつけた

 山本弘氏の「アイの物語」は「他人にオタク趣味をどう思われようと知ったことか!オレはこういうのが好きなんじゃーっ!」と言ってみれば『開き直った』作品です。
 恐らく大半のオタクと同じように「いい加減にそういうのから卒業しろよ」と散々言われてきたことでしょう。

 非常に残念なことに、やはりいい年こいてアニメ・漫画に耽溺する人間はマイノリティに属するのです。
 大半の人間は顔の半分を目が占める幼女みたいな「女子高生」を「可愛い可愛い」と愛でる価値観を共有できません。

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 「フィクションを所詮はフィクションと割り切って楽しむ」事の出来る人間を「大人」と言いますが、それは同時に「つまらん人間」「ロマンの無い人間」になって、クソ面白くもない現実と戦う道を選ぶということです。

 ただ、こう書くといかにも選択肢があるみたいな感じですが、実際には選択肢などありません
 大人になって割り切って生活できる様にならなければそもそも生きていけません。でなければ死あるのみ

 人間は皆、「つまらん存在」である「大人」にならなくてはならない…という宿命を背負っているのです。

 …と、考えがちです。

 だからこそ「電車男」はオタク趣味を完全に否定しました。

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*こちらは映画版。中谷美紀がエルメスなのは本文に「中谷美紀みたい」と書いてあるからでしょう。当時「ケイゾク」とかに主演して人気があったのです。


 一方でその価値観に逆らうかの様に「シュタインズ・ゲート」は厨二病を大肯定し、山本弘氏の一連の著作は自らのアイデンティティとしてオタク趣味を高く掲げたのです。

 とはいえ、結構窮屈な気がします

 完全否定するにしても、完全肯定するにしてもどうしてそこまで肩肘を張らなくてはならないのか

 オタクがオタクなのは「アニメを観ているから」なのでしょうか?そうではないでしょう。
 ちょっと前を時めくアイドルグループAKB48のメンバー渡辺麻友さん

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は大変熱心なアニメファンを自称し、のみならず思考パターンが完全にオタクです。
 心あるアニメファンとして、生粋の声優畑でないタレントがアニメの声を充てるのを苦々しく思っていたらしく、自分の立場ならばどこか適当にファンであるアニメに飛び込んで声優も出来たでしょうに、AKBアニメが出来るまではそうした行動を取りませんでした。

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 また、流行語の「てへぺろ」の発信源の一人とされていますが、「元は声優の日笠陽子さんです!」と聞かれてもいないのに必死に連呼していたのが凄いです。

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 要するに関係ない有名人風情(自分自身です!)が声優の栄光を横取りするのは断じて許せないからこういう言動になる訳です。完全にアニメファンの立場。

 しかし、これらの事実を持ってまゆゆこと渡辺麻友さんを「オタク」であると言えるでしょうか。

 ならば熱心な「ワンピース」ファンを自称するキムタクこと木村拓哉氏は「オタク」でしょうか?

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 そうは言えないでしょう。
 理由は簡単で、彼ら彼女らには立派な「本業」があり、趣味に過剰に依存している訳ではないからです。

 要するに「オタク趣味」そのものは別に肯定するものでも否定するものでもありません。それと「どう付き合うのか」こそが問題にされるべきなんですね。

 一番問題なのが、その対象にアイデンティティを委(ゆだ)ねるほどに嵌(はま)り込んで社会性を喪失してしまうことです。
 劇中で佐藤良子がやっていた「コスプレで学校に来る」「意味不明の厨二病発言しかせず、会話が成り立たない」などがそれです。

 ここまで酷くなくても、訊かれてもいないいらん知識を披歴して周囲をドン引きさせるなどもまた「社会性の喪失」と言えるでしょう。
 身だしなみに気を使わず、不潔であるというのもそれに当たるでしょう。

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 とはいえ、美醜はある程度は生まれつきなので必死に努力している不細工をあざ笑わないで欲しいとは思いますが。

 「全否定」も「全肯定」も「対象に依存している」という意味においては同レベルです。

 確かに、公衆の面前で美少女フィギアやドールのスカートめくって「でゅふふ」と笑うのは良くないですが、自室で全裸でやる分には誰にも迷惑を掛けていないのですから構わないでしょう。
 例えがアレでしたけど、要するに「社会とのスタンス」のお話です。


 最終場面にあって、良子を説得するために一郎は封印していたコスプレ衣装を着こんで、良子を上回る意味不明の厨二病妄想をひたすらまくしたてます。

AURA~魔竜院光牙最後の闘い~ AURA クリーナークロス
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 余りにも現実味のない戯言(たわごと)の機関銃の様な連打に、遂に「張本人」だったはずの良子が呆れて「何よそれ」と吹き出してしまいます。
 最後まで「超自然的な展開」が来るかもと信じさせた原動力であった、良子の「感情が感じられない」描写にあって数少ない“人間らしさ”の出た場面です。

 その後、自分の部屋でライトノベルであろう書籍を段ボールの封印から解きながら物語は終わります。

 要するに「ほどほどのスタンスで、これらも単なる娯楽として付き合っていくよ」という状態に落ち着いたんですね。
 非常に現実味のあるバランスのとれた結末だと思います。
 中盤で妙にスカスカな本棚を何度も映すなどしてしっかり伏線を撒いているのもお見事。

 ラストの説得場面で、自分の過去に向き合って全てを吐き出した一郎は、それこそ「通過儀礼」を終えた訳でその後ならば「厨二病」的な作品を楽しむ「資格」が生まれた訳です。
 その状態ならば、現実まで引きずることは無いであろうという訳。

 確かに、全てを掛けて作品にのめりこんだ方がドラマティックに楽しめると思います。それが出来なくなるというのはある意味さびしいことです。
 しかし、それが「大人になる」ということなんですね。

 個人的にはメタ視点で「オタク趣味なるもの」「厨二病妄想」などをモチーフとして扱いながら、作中できちんと落とし前をつけてみせたのは流石だと思います。

 「げんしけん」は別格ですけど、

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多くの「オタク系」作品は単にモチーフとして用いるだけでそれを使って生き方を真剣に考える様な展開にはなりません。そもそも深く考えていないのです。
 だから取ってつけた様な全否定になるか、自棄糞(やけくそ)になっての全肯定に走るしかなくなる

 お気づきでしょうが、「AURA」の少なくともアニメ映画には「オタクあるある」みたいな展開はほぼありません。現実に存在する作品名を使ったり、「げんしけん」の「くじびきアンバランス」、

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「電車男」の「月面兎兵器ミーナ」

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の様な「劇中作」を作らなかったということもありますが、少なくともそういう趣向の作品ではないのです。

 筆者も一回り若いころは、ガンダムセリフパロディとか、「アニメあるある」みたいなギャグを「アニメ内で」行う閉鎖的ながら笑いの瞬発力は抜群のアニメを楽しんでみていました。

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 「オタクモチーフ」の作品というのははっきりいってそんなもんばかりだったのです。

 そして、そうした作品の積み重ねの中から「AURA 魔竜院光牙最後の闘い」は生まれてきたと言っていいでしょう。

 お見事でした。


・気になったところ



 劇中でミスリードを誘うために何か所か「超自然的な現象としか思えない」出来事が…些細なものとはいえ…あります。これをアンフェアだと取るかどうかは微妙なところです。

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 それだからこそ騙せたというのはあるので。

 また、良子が余りにも人間味が無いのはちょっと残念

 アニメであるという時点で既に「虚構性」はかなり担保されているので、もう少し生々しくしてもバランスは崩れなかったと思います。

 一郎が雨の中妄想をつぶやきながら付いてくる良子を一喝するシーンはこの作品最大の見どころです。
 余りにも真に迫った、オタク野郎のブチ切れ方は心臓を鷲掴みにされて捻(ね)じ切られる様な辛い辛いシーンです。

 何というか、もうお互い最後の信頼というか、ふざけていいところとそうでないところの分別を踏みにじった相手への本気の切れ方が精神をえぐります。

 原作が恐らくそうではないのでしょうけど、良子はあそこで号泣すべきでした。
 あそこまで言われて、それも「全てを分かっている」一郎に怒鳴られて、遂に何もかも決壊して子供みたいにあんあん…いや、ぎゃーぎゃー泣くことでやっと「キャラクター」から「人間」になれたと思います。

 ところが、ここに至ってもなお綾波レイみたいな無感情なボソボソ喋りを止めません。

 筆者などは「やっぱり本当にキチガイなのか、それとも本当の本当は異形の存在なのか?」とまだ判断を保留にせざるを得ませんでした。




 一郎が中学時代にいじめられていたことはそれほど詳しく語られませんが、腫れ物に触る様な両親の接し方などから家族全員のトラウマになっていることがうかがえます。

 実は明らかにヤンキーである姉がいます。

 この姉は乱暴な言葉遣いながら、実は一郎の味方。
 妙なコスプレ女(良子ね)を排除していじめられる原因を絶とうとしてくれるし、暴力事件の加害者への復讐も匂わせます。

 ラストには遂にトラウマを克服したものの、部屋にコスプレ女を連れ込んだ弟の立場をかばって両親を一喝してくれます。

 「AURA 魔竜院光牙最後の闘い」には現実に存在しないファンタジー要素はほぼありませんが、この姉は流石にファンタジーです。
 性格はヤンキーなのに見た目は普通の美女であるということもさることながら、普通はそんな気色の悪い弟などいじめっ子の前にこの姉が「焼きを入れる」ことになるでしょう。
 DQNはリア充と並んでオタク最大の敵勢力です。

 とはいえ、このくらいの救いはあってもいいでしょう。




 本作は「オタクは迫害されている!」という主張する作品ではありません。
 また「いじめ問題」を取り扱ったものでもないし、「スクールカースト」をモチーフにはしていますが、「そういうのは良くない!」と主張する内容でもありません。

 それどころか、今回の「いじめっ子」連中にはかなりの説得力があります
 「これならこいつらがキレるのももっともだわ」としか思えない描写になっているんです。

 主犯格と言える目つきのキツい女の大島ですが、良子とは真逆で物凄く人間臭いキャラです。
 言い方こそキツいものの、「校則違反」を盾に取る彼女の言い分は全く持って正しいです。

 じゃあ、何が気になるのかと言うと彼女もまた基本的には「善人」だということです。

 というのも、大島は「不快感」の反発から良子をいじめぬくのですが、これは感情としてすんなり理解できます。あそこまで怒るかどうかはともかく。

 ところが、救いが無いことにいじめはかなりの部分「快感」で行われます

 よく「いじめっ子」に「いじめられる側の(いじめられて嫌な)気持ちを考えよう」という標語がありますが、ちゃんちゃらおかしいと言わざるを得ない。

 いじめっ子は、いじめられっ子がいじめられることで泣いたりわめいたり傷ついたり、首を吊ったり、手首をかき切ったり、飛び降りて脳みそをまき散らしたり、電車に飛び込んで臓物をぶちまけたりするのが楽しくて楽しくてたまらないからいじめるのであって、本人が嫌がる“気持ちが分からない”からいじめている訳ではないのです。
 寧(むし)ろ“本人が嫌がる”からやっている訳です。

 大島も多少はそういった傾向も見せますが、基本は「因果応報」とばかり「やられたからやり返す」スタンスです。この場合の「やられた」は「妙な言動」とか「校則違反」のことね。

 また、「一切関わるな」と言ったにもかかわらず、本人の前で一郎が良子に話しかけるのを許容してしまっています。
 確かに「やめろよ」とか「俺は無理」とか「もう付き合っていられない」といった言葉ばかりですが、本物のいじめだったら「それすらガン無視しろ」とか「本人を殴れ」とか「服を引き裂け」とか言う筈(はず)。

 こんなぬるいいじめでは現役のいじめられっ子諸君が「いじめといってもこの程度か」と安心してしまわないか心配ということです。

 実際のいじめは原因も分からないもので、もっともっと理不尽でもっともっとえげつなく、もっともっと過酷なものです。とりあえずそれは言っておきたかった。


・いいところ

 とにかく「抑制の効いた描写」です。これに付きます。

 この頃のアニメはちょっとこらえ性が無さすぎです。
 確かに「絶対に許せない」言動というのはありますが、下手すると言い放った奴は二秒後くらいには主人公のパンチを食らって空を飛んでいます。

 流石にそれは大げさですが、いびられたりいじめられたりも中途半端だと耐えられないのか、一気に殺されたり集団レイプされたりに発展して、復讐として相手を惨殺…みたいなことになってしまいます。

 …ちょっと表現が大げさすぎましたが、言わんとするところは分かっていただけたと思います。

 実際のいじめが全部「集団レイプ」みたいに分かりやすければいいのですが、「靴を隠す」だとか「机に落書き」「授業中に消しゴムのカスを飛ばす」といった、単体では軽犯罪にもならないものをネチネチやるものなんです。

 やられる側もひたすら耐え忍ぶしかなく、観ていて非常にストレスが溜まります。しかも、良子は自分で原因を作ってますから半ば自業自得。

 筆者などはほぼ最後の瞬間まで良子が「覚醒」していじめっこを惨殺するものだと思っていたので寧(むし)ろ「溜め」描写だと勘違いしていたからこそ耐えられました。

 寸足らずの描写や「やりすぎ」なら簡単なんですけど、よくぞここまで抑制の効いた描写に出来たと感動を覚えます。

 また、安易なラストということならばいじめっ子と和解してしまったりもしそうですが、結局そうはなりません。橋渡し役はいますけど、恐らく卒業まで没交渉のままでしょう。
 しかし、現実はそんなもんです。


・孤独ということ

 こういう俗にいう「ぼっち」(ひとりぼっちの略)を主役に据えた映画が製作され、公開されるというのは画期的なことだと思います。
 というか、これが製作して商売になると判断されたというのは物凄いことです。

 大半の視聴者が感情移入するのは確かに主役の二人でしょう。そういう風に作られ、演出されていますからね。
 ただ、現実の人間はスクールカーストにおいては「普通」「貴族」側に属するはず。

 「オタク」「ぼっち」の様な「コミュニケーション障害」を病んでいるとしか思えない不器用な人間の気持ちなど分からないでしょう。
 これは別にエリートを気取っている訳ではありません。
 素直に「理解できないだろうなぁ…」としみじみ思っただけです。

 「普通」グループは、何の他意もなく他人に話しかけただけでゲロを吐く真似をされたりした経験など無いでしょう。
 「普通」グループは、大勢でワイワイやっている教室に自分が入ったら綺麗に静まり返って全員がちらちらとこっちを見ながらヒソヒソモードになり、出ていくと普通に話し始める様になった経験などありますまい。

 「貴族」グループは、泣きそうになりながら告白してくる女の子にであったことなど無いでしょう。女子グループ内のいじめで告白させられているのです。

 自分には何の落ち度の記憶も意識もないのに、蛇(へび)や蠍(さそり)だってこんなには嫌われないだろうというほど理不尽にいびられ、蔑(さげす)まれ、貶(おとし)められ、人間性を否定され続けた記憶など無いでしょう。

 モノが隠されたり、無くなったりは当たり前。今日は靴があると思ったら鳥の糞で真っ白なんてことも日常茶飯事。

 自転車はひっくり返され、ヘルメットは溝(どぶ)に捨てられ、逆さに立てられて、それを引き起こすのを遠巻きに数十人が爆笑しながら見ている。
 そういう日常が毎日続いたことがありますか?

 そういう人間にとっては「普通でいること」「普通にやること」が全く理解できない超絶高等技術なのです。

 これは別にだからいいとか悪いとかそういう話ではなくて「そういうものなのだ」と言うだけでそれ以上でも以下でもありません。
 しかし、そういう「物心ついて以来、他人から敵意と害意以外を向けられた経験がほとんどない」人間は確かに実在します。
 生徒自身は寧(むし)ろ品行方正、何もしていないのに、ばれない様にタバコ吸ったり万引きしたりしている優等生よりもクズだと看做(みな)され続けるのです。
 いじめたりしている生徒に訊いてみてもどうしていじめ始めたかなど思い出せないでしょう。

 一郎に対して良子の過去はそれほど語られませんが、恐らくそういったトラウマを引きずっているのでしょう。

 大半の観客にとっては「どうしてそんないじめられるようなことを“わざわざ”するのか?普通にすればいいのに」としか思えないでしょう。
 今回はコスプレで学校に通い、奇妙な言動をしまくるという分かりやすさなので「理不尽さ」が減殺されていますが、これをごく普通に「何の確たる原因もなく」いじめが始まる展開をリアルに演出したら観客が精神的に耐えられないでしょう。

 そして実際に耐えられないからこそ判明しているだけで年間300人がいじめを苦に自殺するわけです。

 300人といえばほぼ毎日1人のペースです。
 これを読んでいる今朝にもどこからいじめられっ子が高いところから飛び降りて脳味噌をまき散らし、電車に飛び込んではらわたをぶちまけ、首をつって糞や小便を垂れ流している訳です。

 目立つ行動は何もしていないのに、天下の大罪人であるかのごとくいじめぬかれる。
 多くのいじめはそういう風に始まります。

 そして年少であることもあっていじめた側やそれを容認していた側の責任が問われることはほとんど無い。
 状況証拠が明らかで、遺書に名指ししてあってすら隠ぺいされる

 言いにくいことでしょうから筆者が大便…もとい、代弁しますが、断罪する側の立場として「ごく普通」の人間であるいじめっ子側が「異常」な人間であるいじめられっ子を攻撃するのは当然のことであって、不幸な結果になったのは必然的な帰結であると。
 それを持ってこれから立派に社会人としてやっていけるであろう「いじめっ子」側に制裁を加えて将来の可能性を毀損するなど狂気の沙汰であり、いじめられる程度のクズが死んだところで何の損失もないどころか社会にとって有益である…と考えているのでしょう。はっきりと口には出しませんが明らかにそういう意識があるのです。

 保身の意味もあって、お決まりの「いじめられる側にも原因がある」という論理が幅を利かせ、遂には「いじめられる側にこそ原因がある」へとエスカレートします。


 良子がごく普通に制服を着て、異様な言動どころか殆(ほとん)ど喋らないキャラであってもいじめが始まる展開の方がリアルはリアルだったでしょう。そこまで行くと不条理劇画みたいですが。

 本人たちにとっては切実なのですが、大半の人間にとっては全く理解できません。

 とはいえ、言い方を変えれば敢えて分かりやすいアニメ的な表現にしたことで、因果関係もはっきりし、演出の力で多少は感情移入しやすくなったともいえるでしょう。

 それこそもしも実写に上手くアレンジ出来たならば多少の普遍性もあったのかもしれませんが、オタクアニメになったことでアニメファンくらいにしか見てもらえないことになってしまってはいます。

 しかし、全世界の思春期の厨二病の皆さんのハートを真正面から打ち抜く作品にはなっているでしょう。この辺が日本アニメのものすごさですね。
 対象を絞り込んでしまうものの、直撃された側は凄まじい影響を受けるのです。下手な普遍性だのはクソ食らえですよ。

 確かにアニメであるということで普遍性は失われていますが、ならば実写にすればいいのか?というとそんなことはありません。
 こういう突飛な設定と筋立てでは実写では浮いてしまいます。正にアニメならではなのです。


・本物のアニメのプロたち

 所謂(いわゆる)「アニメ声」と呼ばれる声質があります。
 世間一般的には、幼女みたいに甘ったれた甲高い声というイメージですね。
 度々揶揄の対象になる要素です。

 鼻持ちならないのが「ゲージュツ」を気取るアニメは大抵既存の売れっ子声優さんたちを「アニメ声だから」と忌避し、タレントや有名人を起用すること。
 筆者が言ってるのは「タレント」とか「お笑い芸人」みたいな「演技のプロでない」方々を「話題性」のみで起用する行為…でもありません。こういうのは全くの論外です。

 個人的には「俳優」さんや「女優」さんの実績ある方々は起用する根拠はあると思います。
 そもそもアニメ黎明期には「声優」などという職業は存在しておらず、俳優さんたちが演技をなさっていたのですから。

 では何が問題かというと、「アニメ声優的でない」声を追及するあまりに「棒読み」にしか聞こえない「新人」を起用する傾向です。
 実写畑の監督さんにもままいますが、生粋の商業セルアニメ畑出身の監督さんがやらかしたりするので事態は深刻です。「オレは下らんオタク向け監督なんかじゃなく、一般人の皆さんにも観て頂ける一流アニメーション作家なんだ!」ってなもんでしょうか。

 「リアルさを追求して演技素人を起用する」趣向は実写の世界にもままあります。
 世界の黒澤明監督も度々演技素人を起用しようとして、結果として上手く行かなかったりしています。

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 「本物っぽく見える」ことと「本物である」ことはイコールではありません

 チャップリンのそっくりさん大会に本人が冷やかしで出場したら3位だった…という都市伝説があります。
 この話を信じるなら、優勝者は「本人」よりもずっと「本物らしく見えた」ということです。

 本当の棒読みと「棒読みっぽく聞こえる味のある演技」では全く違います



聴いた感じはかなり似ていますが、似て非なるものです。

 「アニメ声」について世間の理解が足らない様なのでもう少し補足しますけど、確かに独特の声の張り方ですが、線と色の集合体でしかない「アニメキャラ」が「本当にそのキャラが喋っている様に聞こえる」のはああいう声がベストなんです。
 そこまで熱心なアニメファン、声優ファンでもないのですが少しだけ具体例を。

 例えば伊藤静さんという声優さんがいらっしゃいます。
 世間的に言う萌えキャラが放つ甘ったるくて甲高い声ではなく、低めの落ち着いた声質でいらっしゃいますが、お芝居を聞くと紛れもなく「キャラが喋っている」様にしか聞こえません。
 筆者はこういう声こそ、ポジティブな意味での「アニメ声」だと思っています。
 甘ったるく甲高くもないのに、紛れもなく「アニメっぽい」声なのです。

 そして恐ろしいことに「ならば萌えキャラっぽい声を出してくれ」と注文したら出来ちゃうんですよ。活躍している声優さんたちの実力だと。

 「アニメ的でない」と言う意味では海外の俳優さんに合わせる「吹き替え」なども声優さんの仕事です。
 これも独特のノリがアニメとは違う方面で揶揄されたりします。テレビショッピングの声真似やら、「24」のジャック・バウワーの「吹き替えの真似」なんてのもありました。

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 確かにアニメっぽくはないですが、かといってならば海外ドラマの口調で日常生活を送る日本人などいません。「作ったお芝居」であるこには変わりはないのです。
 まあ、アニメのノリよりも遥かに実写よりなのは間違いありません。
 アニメでも活躍する声優さんが吹き替えで登場していると余りにもトーンが違うので、「はぁはぁ」という息遣いだけでも声優さんを聞き分ける「特定班」でも全く分からなかったりします。
 声優さん業界では「アニメ」は何だかんだ言っても子供向けと見做されていて、さっさと「卒業」して吹き替えに来るのが一種のステータスとされている…なんて話もあります。

 閑話休題。

 アニメ映画「AURA 魔竜院光牙最後の闘い」は意図的に「いかにもアニメ声のキャラ」と「実写吹き替えに近い落ち着いた声質のキャラ」のお芝居を混同させています。

 貴族グループはより実写に近いお芝居で、一部のキャラとオタク軍団はアニメ声です。
 恐らく普通はどちらかに統一するはずです。
 ところが両方あるために、アニメファンはアニメ声を聴いて安心し、吹き替え声で緊張するという体験が出来ました。

 大げさに言えば「夢の競演」と言ったところ。実写の人物とアニメのキャラが絡み合う「ロジャー・ラビット」みたいな感じです。

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 こんな真似は我が国の「アニメ」なるジャンルでしか実現不可能でしょう。正に「アニメ声」を演出の武器として活用してのけた瞬間です。


・お仲間に幸あれ

 多くの観客は良子の言う「世界は狭量」という言葉の意味を理解できないでしょう。いや、共感出来ないでしょう。
 何が原因であそこまで頑(かたく)なに感情を押し殺して自分の殻に閉じこもるに至ったのかを劇中で描いていないので「なんで?」と思うしかないでしょう。

 “普通の”劇映画ならば、目の前で強盗に殺された母親が死姦されるのを観てトラウマになったりする描写にするでしょう。これならトラウマになるのも納得できるし、説得力もあります。

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 ただ、もしもそれをやると「劇映画としての説得力」はあるでしょうが、それはあくまでも既存のドラマツルギーに一致しているというだけであって、完全な「絵空事」になってしまいます。

 良子が“ああなった”原因は明確ではないし、恐らく他人から見れば大したものではないでしょう。
 だからこそ飛躍は無い代わりに嫌になるほどリアルです。

 確かに大きなヤマを乗り越えた良子と一郎は人間として一皮むけるでしょう。パンフレットにもあるように最後はさわやかな気持ちで劇場を出られます。
 しかし、大島たちによるいじめはこれを持って終了した訳ではありませんし、停学を食らったゴリラヤンキーの「お礼参り」も心配。

 きちんと制服を着て学校に来るようになった良子はいかにもアニメ…それも深夜にやってる美少女アニメ…っぽい外観になってめでたしめでたしとなります。
 これも「救い」描写ですよねえ。
 仮に彼ら彼女らが実在したとしたら、相当に見苦しい不細工と撫子のはずで、気恥ずかしいと同時に「見たくもない」絵面であるはずです。
 現実は美しくありません。

 キャラクターデザインなどからして、こういう雰囲気のアニメなら「超能力バトル」に『なるもの』なんですよね。
 その「構図」そのものを利用して観客を「引っ掛け」て、見たくもない現実を突きつける
 実に素晴らしい作品です。

 とはいえ、「厨二病だとか、いい年こいてアニメとか甘えんな!」みたいな説教を食らった「オタク」観客は「言いたいことは分かるけど…」と不満もあるでしょう。
 確かにそれ自体はぐうの音も出ない正論には違いないのですが、それなら「非オタク」である大半の人類はそんなに偉そうな顔が出来るほどの「通過儀礼」を全員が経てるんですか?ということです。

 生まれつきたまたまアニメ好きだっただけで、どうしてそんな辛い目に遭わないと大人になれないみたいな説教食らわなくてはならんのか?

 そこのサッカーの応援のために仕事辞めるぼんくらにも同じ説教してほしいんですけど?
 仕事もちゃんとやってるかも知れないけど、生活費のかなりの部分がパチンコに消えてるそこのサラリーマンにも「甘えるな」とかちゃんと言ってもらってますかねえ?
 引きこもりでもニートでもなく、一応は会社員なんで生活費は全部自分で稼いで自分で使ってるだけなんですが何か悪いですか?

 世間一般が言うところの「オタク」像は結構「幅」があります。

 恐らくオタクの「源イメージ」は「猟奇連続殺人犯」であるところの「宮崎勤」でしょう。

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 非常に垢抜けない風貌で、誤解を恐れずに言えばどこか精神的な幼さと共に純粋さも感じさせるキャラクターであるため、死刑が執行されてこの世の人ではなくなった現在、生々しさが脱臭されてある種の可愛らしささえ感じている人も少なくないかもしれません。
 この手の「純粋さ」イメージは世のシリアルキラーに割とある特徴です。

 しかし、彼がやったことは残忍極まりない連続殺人です。そこは押さえていないといけない。
 ヨーロッパを戦火の渦に叩き込んだヒトラーがそのエキセントリックぶりにどこかユーモラスに見えるのと似ているでしょう。

 確かにある種の精神的な幼さは感じますし、幼女の誘拐を繰り返していていた際にも、子供の方からなついて付いて行ったという「伝説」もあります。精神的に幼稚園児同然で、それに共感してしまった子供たちを引き寄せた…というまるである種の「妖精」みたいなイメージです。

 しかし、彼は巷間言われている様な「ロリコン」「ペドファイル」ではありません。
 あくまでも性欲の興味関心は「成人女性」であって、相手にされないから“仕方なく”手が届きそうな幼女を狙った訳です。
 別に「だからいい」と言う話では全く無くて、あたかも「最初から幼女好きで、幼女を狙った」と言う風に伝えられがちなので訂正しただけです。
 本来甘党なのに、その場にあったせんべいを食べているのを偶然目撃されて「辛党」だと誤解されているみたいな状況なので。

 彼の部屋に積んであって一躍有名になった「若奥様のナマ下着」なるエロ本からも分かる通り、あくまでも性的対象は成人女性ですし、犯行動機は「性欲」です。
 つまり、彼は「純粋」な人間でも何でもない…この点に関してだけは…普通の人間なのです。

 オタクのイメージはかなり分裂していて、「精神的に幼い」とマイナス評価を受けるものの、それは「純粋」であることの裏返しですから稀にポジティブに評価されたりもします。

 「オタクゆえの純粋さ」のポジティブなイメージの結晶が「男女関係にウブな純粋で清い精神を持つオタク」の恋愛ものである「電車男」なのは言うまでもありません。
 個人的にはオタクなんてフェティッシュな性欲に代表される欲望まみれだと思うんですけど。

 同時に「純粋ゆえの狂気」みたいな捉え方もされ、「現実と非現実の区別がつかなくなっている」からこそ「罪悪感を感じることなく平気で人を殺せる」と恐れられている訳です。

 しかし、本当に「現実と非現実の区別がつかなくなって」いるオタクなどいるのでしょうか?

 「厨二病」とは、その名の通り「中学二年生くらいの時期に陥りがちな妄想」という意味で、それこそ「はしか」みたいなものです。逆に言えば「中学三年生」になればもう治癒する病気でもあります。

 とまれ。
 今はあの二人の人生に幸あれと祈りましょう。

 素晴らしい映画をありがとうございました。
 オススメです。

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この記事へのコメント

  • おっしゃりようが意味不明でした

    イジメはダメだと思います
    一方、別に制服は着なくてもよいと思います
    イジメや暴力よりははるかに制服を着ないほうが人間として「上等」かと
    教育するのはむしろ自称「カースト上位」の連中ではないでしょうか

    あなたの見解は完全に理解不能で
    もはや教育ではありません
    教育とは常に理想を目指すものであり
    それはイジメや暴力を否定するものです

    あなたのように奇矯なふるまいのマイノリティーは暴行してよいという考えは完全にわたしには理解できないし許容もできません
    さらに言えばこのアニメーションもそんな意図はないと思います
    甘えているのはむしろ主人公君でしょう
    イジメと立ち向かいなさいな

    ちょっとくらい個性的な人間がいて
    それが自殺を考えるほどイジメられている時に
    どうしてその個性を守れないのか

    これを仮にホモセクシュアルやイスラム教に置き換えてみてごらんなさい
    「イジメが嫌なら棄教しろ」なんて通用しませんよ
    まさかセクシャルマイノリティーや宗教は厨二病と違うからw
    なんておっしゃいませんよね?

    同様に尊ばれるべきものです
    どのような衣服をまとい
    どのような言い回しをするのかを「公共の福祉」以外で制限できるなら
    その社会には信教の自由も性愛の自由もまたありえないでしょう
    魔法の杖なるものを持って登校できないならば
    それはすなわちブルカをかぶって登校もできないでしょう

    乱筆乱文失礼しました
    しかしイジメなぞ肯定されるはずもないのです
    2017年09月18日 15:49
  • ブラックウッド

     コメントありがとうございます。
     とはいえ、反論させてください(^^。

    >イジメはダメだと思います

     イジメは良いとは書いていません。ただ、「このアニメにおいてはいじめる側の気持ちも分かる様に演出されている」と言及しただけです。

    >一方、別に制服は着なくてもよいと思います
    >イジメや暴力よりははるかに制服を着ないほうが人間として「上等」かと
    >教育するのはむしろ自称「カースト上位」の連中ではないでしょうか

     気持ちはよくわかりますが、それは現実味のないお話だと思います。

    >あなたの見解は完全に理解不能でもはや教育ではありません

     はて、教育論をぶった覚えはないのですがどのあたりのことでしょうか。

    >教育とは常に理想を目指すものでありそれはイジメや暴力を否定するものです

     まったくもっておっしゃるとおりです。ただ、念仏を唱えているだけでは平和は訪れません。自衛手段は講じるべきです。

    >あなたのように奇矯なふるまいのマイノリティーは暴行してよいという考えは完全にわたしには理解できないし許容もできません

     一体どこを読めばそんな奇矯な結論になるのかサッパリ理解できません。
     奇矯な振る舞いをするマイノリティーが暴行されるのは残念だという意味のことは書いてあるとは思いますが、暴行しろとか暴行して良いとかは書いていません。

    >甘えているのはむしろ主人公君でしょうイジメと立ち向かいなさいな

     大変申し上げにくいのですが、恐らく最初に首を括(くく)るのはあなたの教え子でしょうね。理不尽ないじめからは緊急避難しないと死ねます。現実的な対処法を模索しましょう。理想が人を殺します。

    >ちょっとくらい個性的な人間がいてそれが自殺を考えるほどイジメられている時にどうしてその個性を守れないのか

     よく理解できません。少なくとも主人公くんは本人がいじめられているというよりは、そこからいち早く脱出できた身分として良子を心配する立場であっていじめられっ子とは少し違う気がします。
     それに、周囲から浮くほどの「個性」なるものがそれほど重要なものとは思えません。この劇中の話ですよ。一般論でなく。

    >これを仮にホモセクシュアルやイスラム教に置き換えてみてごらんなさい「イジメが嫌なら棄教しろ」なんて通用しませんよ

     誰の立場でおっしゃってるのかよく分からないのですが、宗教上の理由でマイノリティが攻撃されるのはよくあることで、「そんなことは良くない」といったところで現実が変わるわけではありません。

    >まさかセクシャルマイノリティーや宗教は厨二病と違うからw
    >なんておっしゃいませんよね?

     草を生やすかどうかはともかく「おっしゃいます」が?
     厨二病と言ったって単なる「痛い奴」でしょう。それを周囲の社会性と折り合いをつけられないのは「子供」です。
     それを一緒にするのはそれこそセクシャルマイノリティや異教の方々に失礼でしょう。

    >魔法の杖なるものを持って登校できないならばそれはすなわちブルカをかぶって登校もできないでしょう

     残念ながらそういう現実もある…というのが私の立場です。ただ、「だからそれがいい」と言ってるわけではありません。

    >しかしイジメなぞ肯定されるはずもないのです

     イジメの肯定をした覚えはありませんが、ただ確かにいじめる側の精神的幼さを攻撃する筆致は不足気味ではあったとは思います。

     書き込みありがとうございました。
    2017年09月19日 23:30