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モアナと伝説の海(ブラックウッド)

モアナと伝説の海 オリジナル・サウンドトラック <日本語版>
モアナと伝説の海 オリジナル・サウンドトラック <日本語版>

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 公開年が同じなので「ズートピア」とアカデミーアニメ賞を競った作品。一応断っておきますが、この評ではネタバレっぽいことも言ってるので本当に何も知らずに観たいって方は観た後に読んでください。大丈夫だとは思いますが。

 評判としていち早く観た連中から「これ、『マッドマックス』なんだが…」なんて気になる情報が飛び込んで来ました。

 まあ確かにウォードラムを響かせながら迫りくるならず者の大群とチェイスを繰り広げる場面はあるっちゃあるし、その迫力たるや物凄いのは確かなんだけど、これだけを取って『マッドマックス』はお互いの作品にとって失礼でしょ。


 ポリネシア地方の神話というか民話をモチーフに構成した作品らしくて、我々外人には馴染みが無くても恐らく現地の人にはお馴染みの名前のキャラクターが活躍するお話。

 日本に例えるとヤマトタケルノミコトっぽいキャラがヤマタノオロチをラスボスにする映画みたいな感じなのかな。

 先に結論を言っちゃうと…値段分は楽しめたと思う。けどそれくらいかなあ。

 所謂(いわゆる)「歌う」ディズニーアニメで、自分の置かれてる状況とか心情とかを全部「歌って踊る」ことで説明するタイプ。
 「ラ・ラ・ランド」が普通のお芝居と歌唱場面がシームレスに繋がることをかなり意識してメタ構造まで取ったのに比べるとかなりストレートなミュージカル。



 「ズートピア」とか「ベイマックス」みたいに「歌わない」ディズニー・ピクサーアニメの積りだとちょっと戸惑うかも。

 これは個人的な感想なんだけど、基本的にネクラじゃないけど人とのコミュニケーションが苦手でリア充とは対極にある人間なんで、多くの人が畝(うね)る様に屈託の無い笑顔満開で笑って歌ってる場面が延々続くと気持ちが沈んでくる。悪くは無いんだけど、ちょっと生理に対して長すぎるもんだから白々しくなるとまでは言わないけど退屈してくるんだよね。

 その点「ラ・ラ・ランド」は「観客がそろそろ退屈し始めたかな?」タイミングくらいでバツッ!と次の場面になるのよ。基本的に歌ってる場面ってドラマの進行は止まるし、実は「情報量」は少ないんですわ。

 ネタバレにならないと思うのでいうけど、途中で大海原を大船団が航海するイメージ場面があるんだけど、特に説明も無いまま延々続くんで非常に困った。
 あれは途中で一旦「そういうことだったんだわ!」と気付く現実場面を入れるとか、ナレーションをかぶせたりするべきだと思う。わけわかんないもん。
 突然翌朝にすっ飛んだのか?とか「このキャラって誰だっけ?」みたいな。


 とにかく絵は綺麗でアニメも滑らかにぬるぬる動いて凄い。顔のお芝居も瞳の大きさから何からきっと全部計算されてモデルが作られていることでしょう。
 ただ…どうしても主人公の女の子の顔がどれもそっくりなんだよなあ…。

 それを言ったら日本アニメだってキャラの顔みんなそっくりではあるんだけど、

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それはそのアニメ内でのそっくりであって、会社まるごとじゃないぞ。京都アニメーションのキャラはみんな似てる…と言えるかな?宮崎アニメのヒロインも…まあ似てるっちゃ似てるけど見分けがつかないほどじゃない。

 そもそも設定に余りノれない。
 女神の心がパーツとして取り外されちゃったから海が着々と死につつある…ってことなんだけど、まさかの「劇場版 艦これ」そっくりな設定。次々に海が死んでいき、その範囲が広がってるってあたりが。

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 まあ、これは冗談だけど。

 外したのは神だけど、人間であるモアナ風情が付けたり外したり出来る程度の「神の心」ってのもなあ。よくあちらの冗談で「海の底の栓を抜いちゃった!」(風呂みたいなイメージ)というのがあるけどなんつーモロい神様なのかって。

 モアナに対して「海がひいきしてくれてる」ってんだけど、…どういう意味なの?

 「アビス」の海水みたいに盛り上がって何となく意思疎通っぽいことをしてはくれるんだけど、遭難しかかったりしても特に助けてくれないし、かと思うと船から放り出されたら助けてくれたり、ラスボスにあたる「テカー」との最終決戦にしても、「水が弱点」というこれ以上無い設定なのにこれまた助けてくれたりくれなかったり基準がバラバラ。

 便利に神様を使い過ぎてカタルシスが無い。本気出してない様にしか見えない。

 しょっちゅう「神の心」石は放り出されて転がったり海に沈んだりするんだけど、これに限っては海が勝手に拾って来たりはしない。劇中で登場人物も言ってたけど「自分で取り戻せばいいじゃん」としか思えない。
 悪い方向にご都合主義なんだよね。

 あそこはせめて何か一言欲しかった。「自分では元に戻せない」理由とか。

 ああ、そうだそうだ。ラスボスの正体については流石に納得いかな過ぎる。まるで「勇者王ガオガイガー」の最終回OAV並に納得が行かない(誰も分からんな)。

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 展開だって悪いけど予定調和。

 だって、とある登場人物が帰って行った時「ああ、これは「スター・ウォーズ エピソード4」のハン・ソロみたいに後で助けに来るな」って10人中12人が思ったでしょ。

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 実際そうなるし。

 恐らく「ズートピア」チームとはチームが違うんでしょうな。
 だから「作り込み」が甘いと思う。
 ゲームデザインで言えば「テストプレイ」が足りてない。

 設定から展開からもっともっとブラッシュアップ出来る余地が沢山あると思う。

 そうそう、よくよく考えたら主人公のモアナの行動原理というか、熱烈に何をしたいか!が伝わって来てない。主人公が物語を推進するエンジンになりえていないんだよ。
 というか、彼女自身では結局基本的には何も出来ず、他人に頼るしかない。確かに最終決戦に挑まんと突撃はするけどあれじゃカミカゼだ。
 女性の自立を謳い上げた(ってことになっている)「アナと雪の女王」からテーマというかモチーフ的にも後退してるんじゃないかなあ。そもそも敵がデカすぎよ。

 だから「単なる人間でしかないモアナ1人では何もできない」構造にしかなりえず、ということは「何が起こっても決してモアナは死んだりしない」ことが分かっちゃってる。だからドキドキハラハラもしない。

 日本のアニメとは男女こそ逆転してるけど、下手すりゃこれ「セカイ系」じゃないかな。
 だって一介の人間が世界を統べる神をどうこう出来るなんて妄想だもん。

 むしろモアナの方が神で、キーを握る人間を連れて行く構造にした方がハラハラするんじゃない?「主人公」だと絶対死なないけど「主人公じゃない人間」は神対神のバトルに巻き込まれれば死ぬこともありえるんでハラハラするし。
 これだこれ。なんちて。


 何度も比較して申し訳ないけど「ズートピア」のスキの無さはただ事じゃないよ。

 とにかく徹底して揉みまくって問題点を洗い出してつぶしまくったんだそうで。

 最終的には物語の根幹に関わる大手術が2回も行われて、一旦は「成立しない」から破棄される寸前まで行き、打ち合わせ全体の9割くらいはニック・ワイルドが主人公だったものがウサギのジュディ―を主人公に持って来ることでやっと再生した…ってなことをブルーレイのメイキングで言ってました。

 ジュディ―がいない「ズートピア」なんて全くあり得ない訳で、よくぞそこまで磨き上げたなあと感心するしかありません。だって企画開始当初とは別物くらい違う話です。そのバージョンに愛着を持ってた脚本家とかにしてみれば悔しいでしょ。でも、作品の完成度を優先して製作行程の最後の最後に登場したジュディ―に華を持たせたんですから。

 私が今の「モアナ」を脚本段階で見せられたらこんな感じの指摘をしちゃうと思います。第20稿の完成版がありえたとするなら、10稿目くらいの脚本のまま映画が完成しちゃった感じかな。
 色々と惜しい作品でした。


 とはいえ、「そのパターンの映画を初めて観た」子供のハートにはヒットするのは間違いないでしょう。それ言っちゃえば大抵なんだってそうだけどね。

 予定調和がどうのとうるさいことを言う大人(おたく)はシネコンなら隣でやってるであろう「ひるね姫」でも観てなさいってこった。

小説 ひるね姫 ~知らないワタシの物語~ (角川文庫)

 あ、でも日本語吹き替えの歌は大迫力でとてもよかったです。

 それからラスボスの「テカー」が名前は格好いいし、「Magic:The Ghathering」の「業火のタイタン」にそっくり

MTG 赤(M12)業火のタイタン(JPN)

で超イカしてて、超格好良くて大迫力で最高でした。
 ここだけ怪獣映画みたいだったもん。

 5分だけ「マッドマックス」になるのも確かにその通りだし、ポテンシャルは物凄くあるんだよなあ…。

*日本版のサントラジャケットからデブがハブられてるのひど過ぎじゃ?*
モアナと伝説の海 オリジナル・サウンドトラック<英語版>
モアナと伝説の海 オリジナル・サウンドトラック<英語版>

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以下、黒家カイミ追記します。
ブラックウッドの評論に概ね賛同。歌やキャラクター描写は良かったけれど、ストーリーをもっと煮詰めて欲しかったです。
強いていうなら、子豚がかわいすぎる。子豚見たさにパンフ買うもあまり大きくは載ってなかった。
子豚を色鉛筆でほぼ日手帳に描いてみました↓

こぶたのプア(モアナと伝説の海).jpg

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