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ゴジラ(2014年)(ブラックウッド)

GODZILLA ゴジラ[2014] DVD2枚組
GODZILLA ゴジラ[2014] DVD2枚組
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ある意味エメリッヒ版の方がマシ ★★☆☆☆

*注:この原稿は「シン・ゴジラ」(2016)の公開前に執筆されています*

 要するに「今回は前回と違うぞ」という煽りまくったミスリード宣伝に騙されたって話。
 これはこれで面白いと評する人もいるみたいで、それに文句を付ける気は無いので面白いと思っている人は読まなくていいです。
 因(ちな)みに前回のハリウッド版ゴジラ(以下エメリッヒ版)の問題点はたった一つのポイントに集約できる。

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「ゴジラの存在意義が分かっていない」

 ゴジラそのものが第五福竜丸の水爆実験に巻き込まれた被爆事件から想起されたことからも分かる通り「核を弄(もてあそ)ぶ人類に対する自然の怒り」なのであって、一種の「天災」「災害」なのである。現在ではこれは手垢にまみれたテーゼということも出来るのかも知れないが、当時にしてみれば非常に真に迫った切実なそれだった。
 言ってみれば「台風」とか「地震」が「怪獣」の姿を取っているにすぎず、幾らミサイルブチ当てようがメーサー砲当てようが効く訳が無いのだ。
 なので毎度ゴジラを倒すのには大変な苦労が掛かる。正直、水中の酸素を破壊したらゴジラが骨になる理屈は未だにサッパリわからんけど「そういうもんだ」という理屈を付けようとしている姿勢は映画視聴者としては心に留めていいと思う。

 ところが日本人以外だと「でかいトカゲ」くらいにしか思わないので、

「いくらでかいといっても、ミサイル食らったら普通死ぬだろ」(この時点で大間違い)

 ↓

「じゃあ走り回って当たらない様に逃げることにしよう」

 なんてことになる。ゴジラのデザインがイグアナだとか、米軍が間抜けに描かれ過ぎとか、緊張感も無い誰も得しない紋切り型の下らんコメディ風味とかそんなものはどうでもいい。一番大事な「大自然への畏怖」が欠けているから全てが駄目になってしまうのだ。

 今回のハリウッドゴジラは実は元祖ゴジラや「ゴジラ(1984年)」と

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も違って、「災厄」としてのゴジラではなくて、「怪獣バトルもの」のゴジラなのだ。
 であるから基本的には人類に敵対している訳ではない。つまり、「人間の味方」として「悪い怪獣」を倒してくれるヒーローものなのである。

 恐らくこの段階で多くの「観ようかな」と思っていた読者はずっこけてしまうだろう。
 実際その通りで、これは寧(むし)ろ「ガメラ」に近い。

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 はっきり言っていい年こいた大人が観る様なものではない。この映画を真に楽しめるのは小学校就学以前の男の子くらいだろう。「お子様ランチ映画」いや「おこちゃまランチ映画」である。

 「エメリッヒ版の方がマシ」と言ったのは、実はあちらは怪獣はゴジラのみで基本的には人類の敵だったからだ。つまらんことには変わりがないが。
 「正義の怪獣」路線になった時点でどうしようもないと言えなくもないが、一応ゴジラが人間と感情を通わすシーンは無いし、ゴジラはゴジラで勝手にやっているだけで別に人類のために使役されている訳ではない…というスタンスは取っている。
 だが、それにしても問題が大きすぎるのでなるべくシンプルに書く。

・とにかく演出がたるい

 本当に退屈極まりない。怪獣映画では前半はタメなのはゴジラ以前から常識なので、それ自体は非難に当たらないが、それは「退屈でいい」という意味ではない。本当にたるくて観ていて眠くてたまらなかった。というかかなり寝ていた。
 ラスト間際の怪獣バトルに至ってすら眠くてたまらんのだからある意味才能だろう。ちなみにこれはエメリッヒ版も同じ。
 「インデペンデンス・デイ」

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に続いてSFアクション映画観ていて眠くてたまらなくなった貴重な経験だった。ある意味字幕で始終クラシックみたいなのが流れ続ける白黒のヨーロッパ映画並みに眠くなる。

・情報量が少ない

 画面で進行している以外の事が本当に何も起こらないし、同時進行していてもどちらも「どうでもいい」から画面に集中する意義が皆無。
 例えば、あざといけど「謎の組織」が暗躍する映画ならば、その組織のエンブレムを意味ありげに映して、幼馴染の味方であるはずの女性の財布にもある瞬間からそのエンブレムが映り込む…とかするだけで一気に観る側の緊張感は高まる。
 要するに視聴者に能動的に画面を見させる作り込みが無いのだ。いい映画は別にミステリというジャンルでなくても、観る側に推理させ、それを裏切り、或いは新しい情報を小出しにしたりして常に興味を引きつけ続けるもの。
 そういった要素が皆無なので本当に退屈。

・サスペンスが無い

 サスペンスというのは映画のジャンルではなくて、「出来事」だ。ハラハラドキドキさせてくれるかの話で、ジャンルは全く関係ない。恋愛映画だってサスペンスがある映画はあるし、大金掛けたスペクタクル大作であってもサスペンス皆無の凡作は幾らでもある。
 ヒッチコックの映画「サイコ」

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にて職場の金を横領した女性が道路を走っていると、延々正体不明の不気味な白バイ警官が追いかけてくる…いかにも何か知っていそうに見えるのだが…。みたいなのがサスペンスだと言えばお分かり頂けるだろうか。画面の地味さだとか低予算だとかそういうのは全く関係ないのだ。
 極論すれば、会話劇でも極上のサスペンスを作ることは可能だ…ってどうして私がシナリオ教室の一時間目に習う様なことを講釈しなくてはならんのか。
 恐らく大量の死人が出ているであろうこの映画だが、名のある人物で死亡するのは主人公の両親しかおらず、それも予定調和だ。関係者は全員安全圏でお茶を飲んでいる程度のサスペンスしかない映画に緊張感などあろうか。
 女房と子供と「どちらかしか助けられない!どうする!?」程度の見せ場しか作れないなんてシナリオ教室の一年生からやり直せと言いたくなる。
 ぶっちゃけあの子供なんて仮に死んだところで主人公にも観客にも心の動揺なんてほとんどない。モブと変わらないからだ。そういう安易な作りがいかんのだって。

・組織描写がいい加減

 主人公のヘタレあんちゃんは軍人らしいけど、管轄外であんなにほいほい作戦に参加できるものなのかね。まるで小学生が書いた思い付き脚本だ。芹沢博士も意味ありげなことばかり言って作戦に口を出すけど、そもそもどんな人なのかロクに説明が無い。仮にどれくらい偉くてもあんなに作戦に口を出せるとは到底思えない。

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・大統領が出てこない

 結構大事な話。あれだけの大惨事になってるんだから間違いなく緊急事態宣言は必要だし、核を使って怪獣ごと吹っ飛ばす作戦なんて大統領の職権じゃないのか?
 恐らくそんなことを言った日には「そんなことは出来ない」と人間同士の争いになってしまうと思う。
 だが、それならそこをじっくり描けばいい。人気の「進撃の巨人」は

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巨人との戦い以前に人間同士の派閥争いの激しさの描写が秀逸だし、84年版ゴジラはしっかり日本国の総理大臣が活躍してたぞ。
 現場で戦闘機に乗れなんて言わないけど、これほど「大統領を格好よく描く」チャンスのお膳立てが揃っている場面も無いのに、一度も画面に表れないどころか存在すら無かったことになっているレベルで無視されるなんて信じられない。
 こういうことにいちいちひっかかるので全く素直に楽しめない。大統領が出てこないのは「巨大な電波障害でワシントンと連絡が取れない」から「独自行動するしかない」とかいう描写一つ入れるだけでも違うじゃない。これじゃおバカ映画の「バトルシップ」の方がまだちゃんとしてる。

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・社会性がゼロ

 仮にあんな怪獣が出現したらどうなるか?
 色々あるが、まずは株価が大暴落したり、逆に核シェルターの株が暴騰したりするだろう。
 パパラッチがゴジラに近づくのを止めようとせず、制止しようとした兵隊や消防団員を巻き込んで死んでしまったりなんてことは私ですら瞬時に思いつく。
 この点、「UFOを崇拝するカルト教団」が当のUFOに焼き殺される描写が入っている「インデペンデンス・デイ」の方がまだちゃんと社会性が描けているじゃないか。頼むよ!

 恐らく実際に怪獣が出現したら、怪獣に踏みつぶされて死ぬ人よりも、パニックを起こした人間同士の殺し合いで死ぬ人の方が多いと思う。
 そういう「人間の愚かさ」を描かずして何が映画か。

 報道管制をしている様子が無いので、恐らくあのニュースは全米に流れまくっているらしい。
 となれば東海岸側に逃げる人間が幹線道路に殺到してパニックになり、「この世の終わりだ」ってんでニューヨークのハーレムなんて暴動状態。略奪や強姦が横行するだろう。
 どうしてそういう描写をしないかね。健全な娯楽エンターテインメントだって?アホらしい。

 むしろ極限状態で飛び出すブラックジョークの一つも観たいんだよこっちは。シャレになっていなくて、笑いじゃなくて顔が引きつっちゃうみたいなのが。そういうのが皆無なおこちゃまランチ映画な訳だ。
 悲惨な死体を目にした軍人が「人間にも赤身と白身があるんだな」と青ざめた顔でつぶやいているところに、人種差別で苦しんでいた登場人物が「肌の下は同じってか」と混ぜっ返すとかさ。
 恐らく軍事関係者なら、大手を振って「新型兵器」の実験が出来るってんで大量の死者が出てるのにニヤニヤが止まらず主人公に殴られるとかさ。「エイリアン2」とか観たことありますかってね。

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 確かにディズニー映画と「ゾンビ」や「ブレードランナー」だったら後者の方がカルト人気は出るだろうが、前者の方が広くヒットするだろう。要はそういう路線を選んだってことだ。

・もうちょっとリアリティを

 怪獣なんてのが出現する時点でそりゃリアリティもクソも無いけど、それにしてもそこにピリリとリアル要素というスパイスを利かせることで全体が引き締まるわけよ。
 平成ガメラでは、「ガメラが出現した場合」を法律で想定していないので(当たり前だ)、臨時法を国会で可決してから動くという描写があった。
(2017年注・この指摘も「シン・ゴジラ」がある今はある種陳腐化してますね)

 細かいことだけど、あんなでかいのが歩き回れば「地震計」でそれが測定できるからかなり遠くからでも予想できるじゃないか。確かに地震計で観測される話は出て来るけど…。
 「ジュラシック・パーク」では出来ていた演出なのに…でかすぎるとどうでもよくなるのか?

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 架空の出来事は百も承知なので、「ゴジラは独特のにおいがする」みたいな(何でもいいんだけど)「いかにもありそうな」シチュエーションを盛り込む程度のことは出来なかったかね。そういう方向の面白さは希求してないのかな。
 天変地異なんだから、むしろ動物の方が敏感な描写くらいあってもいいだろうに。
 嘘か本当かタイタニック号は氷山にぶつかる遥かに前から船内のネズミが一斉に逃げようとしていた…なんて話もある。

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・時系列は?

 日本で出現したムートーがアメリカに向かい、ハワイで出現したゴジラがサンフランシスコで戦う?
 ゴジラの速度がどれくらいか知らんけど、何日掛かるのかね?飛行機でだって十数時間は掛かるんだよ?舞台を広げすぎ。
 サンフランシスコならサンフランシスコ一か所でやるべき。こういういい加減な描写を見せられるとそれだけで萎えちゃう。

・追いつめられた感じが無い

 これは指摘が多いけど、肝腎の怪獣がいざ出現!した瞬間カメラが切り替わって別の場面を映しちゃう。
 閉鎖空間でじわじわ追いつめられ続けて「もう駄目だ!」って感じにならないと駄目じゃん。緊張感も何もありゃしない。
 これは爆弾を巡る戦いでも同じで、要するに「怪獣による都市災害シミュレーション」の考察を徹底的にやってそれを反映すべき映画なのにその行程を全くやってないから適当にやるしかなくてお茶を濁しちゃうんだろう。
 そりゃあ面白くないわな。

(*後日「そんなんばっかりやってる」映画の「シン・ゴジラ」が公開された)


・「実は」描写が不自然過ぎ

 ネバダの真ん中の施設にムートーが収容されているのはいいよ。でもあんな大穴開けてのっしのっし歩いてるのに警報の一つも鳴らないの?アメリカの施設はみんなザルか?こっちが気付いて行くまで何にも分からないってありえんでしょ。
 しかも行く途中であんなの歩いてるのが分からんで中に入ってドア一つ一つ開けて内側から大穴開いてるのに気づく?バカか。
 この手の雑な描写が多すぎていちいち突っ込む気も起きない。

・電磁パルス

 唯一褒められるポイント。
 ゴジラが仮に実際に現れたりしたら、誘導ミサイルを海が干上がるほどぶち込まれて四散すると考えられる。
 しかし、怪獣軍団はどいつもこいつも電磁パルスを発生させて電子制御兵器を無効化してくる…という設定。これはあり。
 ただ、言ってみればECM爆弾が爆発しているみたいなことになってるんなら周囲のハードディスクは全部オシャカだろうから、極論すれば都市インフラは崩壊。電子制御になっている信号機すらまともに動かなくなる。
 この点「ダイハード4.0」の方が良く描けてる。

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 「そういう周辺描写は邪魔だ」って人がいるけど、全く逆だと思う。そういうのコミで演出出来る絶好の素材だと思うんだけどなあ。

・米軍ってそんなにアホなの?

 エメリッヒ版で脱力したのが米軍が弱くて無能を越えてお笑い集団並みということ。
 あんなにでかいゴジラが走り回ってるのにしょっちゅう「見失いました!」だもん。あんなもん見失う方が難しいだろ!
 一応地下に潜ってたってことだけど…、いや、もういいよね?ツッコミは。

 やっと見えたから都市の真ん中でミサイル撃ったら避けられて後ろのビルを破壊して「あーしまったー!」ふざけんな。
 でも今回も同じ。
 ムートーが飛んで移動してるのに場所が分からんのだって。あのクソでかさで分からん?そりゃ電磁パルスは発してるだろうけど逆に分かるでしょうに。海の上だったとしても何のために軍事衛星を上げてるの?軍事衛星からすらノイズで見えなくなるような電磁パルスを常に発してるんなら地球はとっくに全滅だわ。
 車のナンバープレートまで読み取れると豪語する自慢の軍事衛星はあのデカさの怪獣がばっさばっさと飛んでるのを捕捉できないの?
 第一次世界大戦以前に技術が退行しとりますなこの世界は。ミノフスキー粒子でも掛かってんのか。

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 サンフランシスコ決戦だって、ゴジラもムートーも放ったらかしでアナログ式の原子爆弾を追い回してる。
 何がしたいか分からんからこっちも気持ちの盛り上げようがない。ぶっちゃけゴジラ相手にパラシュートで降下してる予告編を見た時から少し嫌な予感はしてたけどさ。
 そもそもハワイからあんなにゆっくり泳いでくるゴジラに気が付いていながら西海岸の住民を避難させておかないわけ?でもってまんまと上陸されてあの大参事。もう観てられない。

・街の破壊シーンが無いぞ!

 これは今回の映画好きでも擁護出来ないだろう。
 160億円もの予算を使いながら怪獣がいま正に街を!ビルを破壊する描写が無いのだ。あったのかもしれんけど覚えてねーよ。どの場面も「気付いたら壊れてた」ばっかり。何もかもグダグダなんだから、せめてそこくらいはカタルシスを感じさせてよ。
 予算はどこに行ったんだよ。スタッフで飲んじゃったのか?

・結論

 どうも何か我々は勘違いをしていたみたいだ。
 元祖「ゴジラ」くらいまでは良かったんだろうが、冷静に考えたら「怪獣映画」なんて本気で面白いと思って観たことなんて一度だってあったかね?
 昭和「ガメラ」なんて小学生の時点の私ですら「余りにも子供だまし」でアホらしくて笑いながら観てたぞ。 

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 主演女優が棒読みだとか、スーパーXがダサいとか色々問題あるけど私は84年版が好きだなあ。

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 なんのかんの言っても「ゴジラ=災厄」スタンスで描いた作品だし、「ビオランテ」以降に繋がる復帰第一作という建前なのに思いっきりゴジラを倒しちゃってる。
 ネタバレしないように言うけど、結局人類がゴジラを倒したとは言い切れないラストも渋いし、倒れていくゴジラを見つめる首相の何とも哀しそうな表情とか観るべきところは多い。そりゃ何もかも大絶賛はしないよ。冒頭の巨大な虫が襲い掛かって来るところの安っぽい特撮は失笑もの。でも重厚なオープニングテーマなどそれなりに佳作。伊福部マーチが聞けなかったりもするんだけどね。

 今回のゴジラは怪獣そのものは実は割とどうでもよくて、ゴジラを軸に引き起こされる醜い人間模様などが見どころであろうに。何を爽やかに続編ありありの作りにしてやがるのか。
 放射能を吸い取るって、ゴジラはそもそも「放射能火炎」を吐いて放射能をまき散らす怪獣なの!あれじゃ便利屋じゃないか。ゴジラは人間の尻拭いの存在なんかじゃありません!

 「悪い人間」が出てこないのも興ざめ。倒された「KAIJU」の死体をバラして売る悪徳(?)商人が跳梁跋扈しているという「地に足の付いた」設定の「パシフィック・リム」の爪の垢を煎じて飲んでほしい。

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 米軍や諜報関係者が必死にゴジラの情報を収集しようとして、面白がって誤報やら怪獣映画のスナップやらを流しまくる性質(たち)の悪い怪獣マニアに散々苦しめられるとか、ネタなんて幾らでも思いつく。

 そもそもデカい怪獣が現れるなんて荒唐無稽なお話はいい年こいた大人が観る様な映画じゃないのだ。続編には怪獣が沢山出るとか言ってるけどもういいよ。
 だって本気で考えれば「世界一」のアメリカ軍の敵じゃないよあんなでかいトカゲ。空爆でものの数分でゴジラなんて肉の塊にされてしまうだろう。
 そうなると怪獣が登場してから数分で映画が終わってしまう。

 それをどういう風に「それらしく」2時間の映画として成立させるための屁理屈をでっち上げるかを楽しみにしてるのに「まあまあ、そういう野暮は言いっこなしで」と甘ったれた姿勢で映画作ってるから恐ろしく退屈になるのだ。
 「パシフィック・リム」は「怪獣を空爆で倒すと体液が飛び散ってどうにもならんから、人間型のロボットで殴り倒すのが一番被害が少ない」という「設定」があったでしょうが。
 その設定がどうだとかじゃなくて、「ちゃんと目配せしてるよ」ってのが伝わってくるか来ないかの話をしてんの!
 「なるほどそれなら仕方が無いな」…という姿勢になれるじゃない。

 怪獣の死骸発見シークエンスにしても、過去のエピソードにしてもどれもこれも紋切り型の描写ばっかり。「家族愛」押し出しに至っては「もういいよ」としか思えない。
 舞台は広いはずなのに、奥さんみたいな関係者ばかり映すから、画面に映ってる人間こそ多いけど実質的な登場人物は10人くらいしかいないスケールの小さな映画になってる。
 電車で別れた子供を主人公が拾う場面で「ああ、この電車は怪獣にやられるな」というフラグ立ちまくりで実際にそうなる。それでいて他の乗客は死にまくりなのにその子だけは助かってる。
 全部予定調和。予想が付くのに何一つ上回らない。
 それこそどうせ死なないなら、自分の子をピンチに投げ込む程度のことがどうして出来ないのか?それはそれであざといけど、電車の子なんてそれ以下のサスペンスじゃん。

 大体あのオヤジがあっけなく死んじゃうのは何なのかね?
 一見して精神がおかしくなったマッドサイエンティストで、周囲からも家族からも馬鹿にされてたけど、人類のピンチに至ってそれまでの研究の成果が実を結び、この駄目オヤジの活躍で人類の大勝利!…というカタルシスくらいあってもいいじゃない。「今までバカにしててゴメンよ」ってね。
 というかそれこそ「いい年こいて怪獣映画なんぞに夢中になっている駄目な観客」のメタファーにして「ギャラクシー・クエスト」やりたいんならそうすべきだった。

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 でも殆(ほとん)ど意味なくあっけなく死んじゃう。一緒に行った人間と「おいおい、息子とロクに話してねーぞ。ゴジラのことちゃんと伝えとけよ」と笑ってたよ。
 そもそもあのオヤジのトラウマになったのってゴジラだったんだかムートーだったのかも不明。実に締まりの無い映画だ。

 本当に登場人物に幅が無くて「いい子ちゃん」だらけ。
 「怪獣映画の中の世界には『怪獣映画』が存在しない」問題はここでも起きてる。
 現実にゴジラみたいなのが現れたとして、まず最初の感想は何か?そんなの「(映画の)ゴジラみたいなのが本当に出た!」に決まっている。
 「ダイハード4.0」のウォーロックみたいなイカれた怪獣オタクが狂喜乱舞しているところを踏みつぶされる程度の描写も出来ないのかね。


 「エンダーのゲーム」や「オブリビオン」ですらパンフ買った私がパンフも買わずに映画館を出たのは珍しい。あの出来でドヤ顔で“語り”をする監督のコメントなんぞ読みたくなかったのが第一だが、やっぱり詰まらんかったからね。

 恐らく怪獣映画で一番出来がいい「平成ガメラ」にしたって、「怪獣映画にしては」ってくくり付きだし、実のところ「パシフィック・リム」も個人的には80点くらい。
 要は「子供騙しの『怪獣映画』」以上でも以下でも無いってこと。決して出来のいいそれではない。

 実は「究極の」と言ってしまうと言い過ぎだけど、満を持しての「ゴジラ映画」たる金子修介監督版

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がある。しかし、あれだけ正統派の作りをしていて(ということにしてください)、私みたいに屁理屈が多いのが観ても「良く考えられてるなあ」と感心する映画ながら殆(ほとん)ど話題にも上らない。オールタイムベストでも圏外。
 人気なのは白目の「GMKゴジラ」の造形くらい。



 要するにみんな「お笑いネタ」くらいでしか怪獣映画を観てないんだろうね。「いやあ、今年もヒドかったなあ」って笑うのが平成ゴジラのたしなみだったっていうんだからそうなんでしょ。
 暴れる怪獣を背景に思わず記念撮影しちゃう「人間の愚かさ」を抉(えぐ)る描写のある「考えさせる映画」になってる金子版とか求めてないんじゃないか。

 大体特撮映画を10億円の予算で作るなんてありえない。乗用車を1万円で作れと言われてるみたいなもの。そりゃ安っぽくもなる。これは日本の話ね。
 今回のゴジラはそりゃ大予算の話題作だけど…。どうして日本公開が最後になったかはもう分かるよね。

 でもまあ、儲かってるみたいだからいいんじゃないかな。

*****

後期

 そんなこんなでこの後の「ゴジラ映画」が「シン・ゴジラ」だったわけ。

 某評論家だったかが「映画としては100点、怪獣映画としては80点」みたいなことを言っていて「なるほど」と思ったもの。
 海外で軒並み大不評らしい。「ゴジラが暴れる場面がほんのちょっと」とかね。どこを観てんだとしか言えない。

 元々着ぐるみ怪獣映画なんてのは日本のドメスティックなコンテンツだったのだ。

 「シン・ゴジラ」についてはもう書いたので読みたかったらそちらをどうぞ。

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