0コメント

映画「遊星からの物体X ファーストコンタクト」(旧作含めてネタバレあり。引用画像にグロ多いので閲覧注意)ブラックウッド

遊星からの物体X ファーストコンタクト Blu-ray
ポニーキャニオン (2016-03-16)
売り上げランキング: 4,875


06000450126546.JPG

【遊星からの物体X ファーストコンタクト】
2011年 アメリカ /監督:マティス・ヴァン・ヘイニンゲンJr. 出演:メアリー・エリザベス・ウィンステッド、ジョエル・エドガートン、ウルリク・トムセン 他





 前々から気になりすぎる映画だったんですが、遂に視聴できる環境に恵まれました。

 映画ファンには「釈迦に説法」もいいところですが簡単に説明をば。

 元は伝説の名編集者、ジョン・キャンベル・ジュニアの短編「影が行く」でした。

影が行く―ホラーSF傑作選 (創元SF文庫)
影が行く―ホラーSF傑作選 (創元SF文庫)

 SFファン的に言うと、かのアイザック・アジモフとかの「師匠」に当たる方で、この人がいなかったらSF界もかなり違っていたという超重要人物。この人の名前を冠した「SF賞」が2つ存在するほどの人なんですよ。

 でもって、その短編が巨匠ハワード・ホークスにより映画化されます。それが邦題「遊星よりの物体X」

遊星よりの物体X-デジタルリマスター版- [DVD]
オルスタックソフト販売 (2015-06-27)
売り上げランキング: 12,269


 原作には「どんな姿にもなれる」とあるんですが、何しろ1951年(!)の映画なんで、大男がうがー言ってる程度。

 ちなみに藤子不二雄A先生は若い頃新聞社に勤めていて映画評も担当していたのですが、この映画を評していたりします。その様子は「まんが道」に掲載されていたりするのでこちらもどうぞ(ご丁寧に当時の紙面のキャプチャまで。割と冷ややかに論評してるのが面白いです)。

まんが道 (1) (中公文庫―コミック版)
藤子 不二雄A
中央公論新社
売り上げランキング: 30,977


 で、ハワード・ホークスを個人的に尊敬しているというB級映画の職人監督、ジョン・カーペンター監督によって1982年にリメイクされます。これが邦題「遊星からの物体X」。

遊星からの物体X [Blu-ray]
ジェネオン・ユニバーサル (2012-04-13)
売り上げランキング: 3,784


 微妙に邦題も変えているんですが、どちらも原題は「THE THING」。無理やり訳せば「あれ」とか「それ」みたいな感じなんでしょうか。一応「いきもの」という意味にもなるそうで。
 「THE」という定冠詞がついているので「あの、あれ」みたいな。「正にそれ」というか…。

 あまりにもおぞましくて形容しがたいので、「…あれ」としか言えないみたいな。

 とはいえ「遊星からの物体X」という邦題はとてもいいと思います。「あれ」じゃタイトルにならないし、「ザ・シング」じゃあ聞いた人が「座・寝具」と間違えるかも(ねーよ)。

 そしてとにかくこの82年版の「遊星からの物体X」はあまりにも衝撃的で、多くの人にトラウマを植え付け、後世の作品に影響を与えまくりました。

 当時若干22歳のロブ・ボッティンによる「凄まじい」としか形容しようのない特撮。
 グロいわキモいわともうムチャクチャです。




 確かに原作には「どんな姿にもなれる」的なことは書いてあるんだけど、それをバカ正直に映像化するという暴挙。最高です。




 今もちょっと人間が変形したみたいなモノを見るとみんな「物体Xだ」と実況が湧いたりします。

 実はそこも物凄いんだけど、最大のキモは「誰が物体Xなのかわからない」という疑心暗鬼が広がって誰も信じられなくなってにらみ合いになること。

 この作品が普遍的な人気なのは、正に…臭い表現でなるべく使いたくないんですが…「人間ドラマ」が描かれていたからでしょう。負の側面からのね。

 単に特撮がスゴイってだけじゃないんです。

 改めて先日「遊星からの物体X」を見返したんですけど、「ああ、これは寄生獣だな」と思いました。

寄生獣 フルカラー版(1) (アフタヌーンコミックス)
講談社 (2014-02-21)
売り上げランキング: 48,145


 自在に変形する形状や、最初の「花びらの様に割れる頭部」とか「犬に寄生してる」描写は完全に「物体X」リスペクトです。




 そして何と言っても「誰が寄生されているのかわからない」という疑心暗鬼もまた「寄生獣」の魅力です。

 キリが無いでもう一つだけにしますけど、ゲーム「デッドスペース」

Dead Space 2 (輸入版) - PS3
Electronic Arts(World) (2011-01-25)
売り上げランキング: 10,842


に登場する「ネクロモーフ」




は完全に「物体X」そのもの。

 80年代といえば特撮のことを「SFX」なんて呼んでいて、1979年頃に「スター・ウォーズ」が大ヒットしてますから正に大ブームの頃でした。「物体X」の企画にGOが出たのはむしろ「エイリアン」

エイリアン/ディレクターズ・カット (字幕版)
(2013-11-26)
売り上げランキング: 8,589


のヒットのおかげだそうですが。

 ゾンビメイクなどにも注目が集まって、下手すると当時の「憧れの職業」の中には「特殊メイクアップアーティスト」とか「特撮(SFXマン)」なんてのもありそうな勢い。

 ただ、ただれた跡とか、人間が狼男になるとか

狼男アメリカン [Blu-ray]
ジェネオン・ユニバーサル (2012-04-13)
売り上げランキング: 27,470


程度ならともかく、「物体X」のそれはありとあらゆる想像力をぶっちぎっています。
冷静に考えたら「AKIRA」の

AKIRA 〈DTS sound edition〉 [DVD]
ジェネオン・ユニバーサル (2011-06-22)
売り上げランキング: 1,292


鉄男の最後




だって、「物体X」の延長線上だし。

 とにかく映像作品におけるターニングポイントであり、SF映画のマスターピース「遊星からの物体X」においてこの30年間話題だったのが

「ノルウェー隊に何が起こったのか」

でした。

 …まあ、大体予想はつくわけですが(爆)。

 なんとそれをきっちり「映像化」したのが今回の「遊星からの物体X ファーストコンタクト」でした(ああ前提長かった)。こちらを「2011年版」と呼称します。

遊星からの物体X ファーストコンタクト (竹書房文庫)
ジョン・W・キャンベル・Jr[原作] エリック・ハイセラー[脚本]
竹書房
売り上げランキング: 796,277


 あの静かで不気味な音楽



めいたものから幕を開けます。このあたり原作リスペクトが素晴らしい。

 邦題には「ファーストコンタクト」とありますが、原題は「THE THING」だけなんですね。

 82年版で冒頭で犬を追いかけてきたヘリコプターの場面に繋がるまでの映画化なんですが、82年版の中盤でカート・ラッセルたちが訪れる「ノルウェー基地」のセットなどが忠実に再現されていて「ああ!あれってこれか!」が存分に楽しめます。

 ただ、個人的には「この惨状になってしまうのに一体何があったのか」を一切描かずに想像だけさせていた82年版の方が想像力が広がるところはあったかな…と思ったり。
 もっとも、それは実際に前日談を映画化するということになった企画者さんたちも嫌というほど言われていたでしょうが。

 ちなみに82年版ではノルウェー隊が吹雪の中何日も何日も「何か」を探索し続けるビデオがかなりの長時間収録されている…という描写があるんですが、この「ファーストコンタクト」では描かれませんでした。

 というより「掘り出してから」がジェットコースターみたいな展開で、「一晩の出来事」みたいになっています。

 結論なんですが…。

 確かに面白いし、グロイしスゴイんだけど、不思議なことに技術的には圧倒的に進んでいるはずのこの2011年版よりも82年版の方が迫力がありました。

 2011年版は、最初に登場した時に暗闇でよく見えない…という演出になってるんですが、実はこれ82年版では余りやってません。

 むしろ最初の「変形する犬」から「これみよがしに」やってます。

 幾つか原因は考えられますが、82年版は「リアルにそこにあるもの」を例え作り物とはいえ撮影しているわけで、「実在感」は間違いなくあるんです。

 そして、「カメラを振り回す」ことが難しいため、必然的にじっくり見せられます。

 女性だろうと遠慮なく変形させる無慈悲さや、強烈な前作をリスペクトした結果最近の映画には珍しいほどハードボイルドに「疑心暗鬼」が描けています。

 ただ、「物体Xの動きが速すぎ」るので迫力よりも「軽さ」を感じてしまうんですね。演出的にも物理的にも。

 82年版は当然「素早く動く」ことは出来ないのですが、それが不気味さにつながっていたのかもしれません。

 前回は全員男だったムサ苦しさも魅力の一つでしたが、今回は美人女性が2人もいる上に一人は主人公。時代的に仕方がないのかもしれませんが、上手く働いていたかどうかは…「強烈なプラス」だったとは思えないとだけ。
 一人目の犠牲者のリョナ(知らない人はググってね)っぷりは好きな人は好きなんでしょうが。

 観たことがない人は予告編をどうぞ。



…ぶっちゃけこのCMが一番怖かったかも(笑。

 静かなシーンで突然大きな音をさせて驚かせるのは反則!

 単純にびっくりするってこともあるけど、今時スラッシャー映画でもそんな幼稚なことしない。それは「怖い」んじゃなくて「びっくりしてる」だけ。

 久しぶりにみたもん。「突然大きな声」演出。あまりにもベタすぎて「そう見えて実は違う」演出だと思ってたくらい。

 それから、82年版の最大のサプライズに近いのは、最後の最後に出て来る「超巨大物体X」でしょ。
 はっきりわからないけど高さ数メートルはありそう。

 サイズがおかしくなってて、超巨大な犬の頭とかひっついてて、それまでの本編で見せられた「想像力の限界」を更にぶっちぎる「ムチャクチャ」ぶりにもう絶句もの…だったのに、今回は最後まで物体Xが小ぶりのまま。
 せいぜい人の2~3人分くらいの大きさ。

 確かにCGで「超巨大な生きている肉の塊(かたまり)」みたいなのを出したら笑っちゃうほどの非現実さになるかもしれないけど、2011年の映画が82年の映画に負けたらアカン。

 最後の怪物は明らかに82年版の勝ちでした。

 ラスト手前の場面もよくわからなくて「あれ?」って感じ。

 82年版では「この火が消えたら俺たちは凍死だな」みたいな事を言ってたけど、2011年版ではちょっと説明が足らなくて「もうここで寝たら凍死しかない」言い切りが足らなくて「単に疲れたから寝た」みたいに見えちゃった。

 最後の物体X疑惑の人も、あそこでぐちゃぐちゃに変形しないから「人間だったのかも」みたいな妙なことに。人間だったのなら「人間だった!」(人間を焼き殺しちゃった!)演出にしないと。

 おかしいなあ。どうして82年版よりも特撮シーンを出し惜しみしてるんだろう。

 ラストもああなるのはわかってたし、投げる手榴弾を事前に見せておくみたいなサービスシーンはあったものの、ちょっと辻褄が合わないかも。

 ああそうそう、途中で「宇宙船」が起動する場面とかあるけどマジでいらん。ああいう「宇宙人の文明を感じさせる」描写とか一切無い泥臭さが前作の魅力だったので。
 あれがあるから印象が軽くなってるんですよ。82年版ってロクにBGMも無い静まり返った映画で、雰囲気だけでいえばヨーロッパの名画みたいなところがあって、派手で軽い80年代のスラッシャー映画とかとちょっと違う孤高の感じがいいので。


 色々厳しいことも書きましたが、十分水準以上。82年版ほどの伝説にはもちろんなりませんが、82年版ファンへのプレゼントみたいな映画です。
 ていうか、ラストの犬を追いかけるシークエンスなんか旧作を見ていないと全く蛇足にしか見えない…というふうに感じてしまったんですが、もしも82年版を観てなくてこっちだけ観た酔狂な方がいたらその方の感想も聞きたいです。


↓黒家カイミ追記スケッチ。15分ほどかかりました。私も正直に言うと、82年版の方が怖かった。2011年版でいうと、CMが一番怖かったです。ラスボスは、ガンツ・オーのぬらりひょん位巨大変化する・・・というのはどうでしょう・・・(フルCGだと面白かったけど、実写だとちゃちくなるのかな・・・)。
遊星からの物体X2011.jpg






遊星からの物体X ファーストコンタクト Blu-ray
遊星からの物体X ファーストコンタクト Blu-ray
ポニーキャニオン 2016-03-16
売り上げランキング : 4875

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
遊星からの物体X [Blu-ray] ミスト Blu-ray シックス・センス Blu-ray ピラニア Blu-ray 空の大怪獣Q 超・特別版 [Blu-ray] パージ:アナーキー [Blu-ray] クリミナル2人の記憶を持つ男 ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray] パッセンジャー [Blu-ray] マルホランド・ドライブ 4Kリストア版 [Blu-ray] キングコング:髑髏島の巨神 ブルーレイ&DVDセット(初回仕様/2枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]

この記事へのコメント