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映画「バットマン ダークナイト」(ブラックウッド)

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【ダークナイト】
2008年 アメリカ・イギリス /監督:クリストファー・ノーラン  出演:クリスチャン・ベール、ヒース・レジャー、アーロン・エッカート、マギー・ギレンホール、マイケル・ケイン 他


 先日ドラマ化もされた東村アキ子先生の「東京タラレバ娘」

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の中に爽やかムービーゴア野郎が出てきます。

↓爽やか映画マニア、奥田さん。
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↓コミックス4巻より抜粋。タラレバに私の思ったコメントを言わせてみた(黒家カイミ)
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 こいつはファッションとしてではなくて、本気で「白黒の古いヨーロッパ映画」とか「テーマのある(失笑)映画」みたいなのを「いい映画」だと思ってるタイプです。

 映画における「テーマ」も、まあ結構なんですが基本は「見世物」です。

 初期の映画プロデューサーにはサーカス関係者が多いのは映画通なら常識。


興行師たちの映画史.jpg
*柳下殻一郎「興業師たちの映画史」


 とりあえず黙って座ってりゃ「観る」ことが出来る娯楽である「映画」において必要なのはテーマでも芸術でもなくて

爆発
おっぱい


です(言い切った)。

 「死霊のはらわた」ならどんなバカでも笑って観られます(爆)。

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 とはいえ確かに「人生について深く考えさせてくれる」映画ってのは確かに存在はしています。
 でも往々にしてそうした映画は説教臭くなりがち。「派手な見せ場がない」のは「退屈である」こととイコールではないのに、一切のサスペンスも無い映画とかも多いこと多いこと。

 ただ実は、「娯楽映画」を作っている人たちは、そうした映画ばかり作っていると段々虚しくなるみたいで、「いつかはこんな爆発とか怪獣とかの映画ばっかりじゃなくて、ちゃんと胸を張れる立派な映画を撮ってみたい」と思ったりするみたいです。

 …そして大抵は採算度外視で大金をつぎ込んで大失敗します。

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*マイケル・チミノ「天国の門」

 ジョン・カーペンターとかロジャー・コーマンなんて人たちはそうした欲を一切捨て去った仙人みたいな人たちです。
 つまり「絶対に超大作は作らない」「絶対にA級映画は作らない」のをポリシーにしてる訳です。

↓ジョン・カーペンター監督が『遊星よりの物体X』をリメイクしたSFホラー。
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↓ロジャー・コーマンが製作を手掛けたカーアクション。
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 それほど「A級映画」ってのは鬼門なんです。

 「ターミネーター」「アビス」「アバタ—」でお馴染みジェイムス・キャメロン監督の最初の奥さんであるゲイル・アン・ハード女史は「ジェームス・キャメロンの映像力学」の中で

ジェームズ・キャメロンの映像力学 (ビクターブックス)
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「いつかはA級と言われる映画を撮りたい」と何の衒(てら)いも無く言っていてちょっと驚きます。

 ちなみに後日「エイリアン2」

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がこの手の娯楽作で史上初の「アカデミー賞ノミネート」を果たします。更にその後、アカデミー賞になんかまず縁が無いと思われていた「サイコ・サスペンス」である「羊たちの沈黙」が遂に「作品賞」を得るに至るのですがそれはまた別の話。

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 最大の問題は「気取ったA級映画」なんつーものはお客さんが入らないんです。

 ちなみに「B級映画」というのは当初「同時上映」が多かった映画館システムにおいて、添え物側の短い映画のことを呼ぶ単なる分類名でした。

 そうしたものは低予算でちゃちな作りが多かったため、「B級映画」というのが「安物の娯楽映画」みたいな意味に転化していく訳です。

底抜け超大作 (映画秘宝コレクション)
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 閑話休題。


 そこでハリウッドが考え出したのが「お客さんの入るコミック原作のB級(ということになっている)映画」で「テーマを描く」というアイデアだった訳です。

 その嚆矢(こうし)にして最大の成功例がこの「バットマン・ダークナイト」だった…と。

 ちなみにここの「ナイト」は「夜(night)」ではなくて「騎士(Knight)」の方。「暗闇の騎士」というわけ。

 アメコミファンなら誰もが思い浮かべる超有名にして「バットマン」シリーズそのものを現代に続く人気作にした記念碑的作品の「ダークナイト・リターンズ」

バットマン:ダークナイト・リターンズ


にタイトルは似てますが違う作品です。というか明らかに似せてるんですよね…。

 どの監督も「バットマンやるなら『ダークナイト・リターンズ』監督したい」と思ってるのが見え見えという…。



 ここで突きつけられているテーマは「正義とは何か?」

 シリーズ最大の敵である「ジョーカー」は精神異常者であるために何度逮捕されてもすぐ釈放されてその都度悪事を繰り返します。

 これが東村アキ子先生に理解できないところなんですが、「加害者の人権は守られるのに、被害者の人権は守られない」テーマのためのおぜん立てなんですね。

 このテーマの代表作が「ダーティハリー」です。

ダーティハリー [Blu-ray]
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 犯人の「スコーピオン」はハリーがちゃんと逮捕したのに「ミランダ権」(お前には黙秘する権利がある。証言は裁判で不利に使われる可能性がある〜って奴)の「読み上げ」を忘れたために釈放されてまた悪事を起こしてしまう訳です。

 今回の「ジョーカー」はこの「スコーピオン」をより大規模にした奴だと思えば概(おおむ)ね間違いありません。

 スコーピオンが良くも悪くも「天然」だったのに比べるとジョーカーの方がより悪質ではありますが。

 コミック原作の実写映画化の成功例ということになると、「死霊のはらわた」でお馴染みサム・ライミ監督の「スパイダーマン」

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ということになってますが、その前にティム・バートン版の「バットマン」が存在しています。

バットマン [Blu-ray]
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 この時にウケた理由の一つに「バットマンの身の回りのギミックの実写バージョンが観られる」ことだったりします。これがハリウッドの最新特撮で描かれるもんだから格好いいこと!

 「バットマン」の歴史は古くて、テレビアニメ版があったことは多くの方がご存じでしょう。

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 その他にも「実写ドラマ版」もあります。

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 これがまあ、当然ながらヘロヘロの出来で「キャンプ」なノリを笑って楽しむお気楽にしておバカな作品でした。

 「キャンプ」ってのも日本語での説明が難しい概念なんですが、「ホモホモしいノリ」みたいな感じです。

 確かに、筋肉ムキムキのぴったりスーツ着た露出狂の変態みたいなの(バットマン)と少年(ロビン)がコンビで街中をうろつきまわるシュールさはそういう笑いにしないと表現出来なかったってところでしょう。

 話を戻しますが、時代も進んだこの時期作られた最新版の「バットマン」は、「キャンプなノリ」など一切なく(そもそもロビンが出てこない)非常にシリアス。

 その生真面目なノリの中で、お馴染みのキャラの実写版が次々に登場していく…という趣向なんですね。

 その点、手塚キャラが次々に「浦沢版」として順次登場する「プルートゥ」に近いかも。

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 だから「あ、トゥーフェイスってこういう風に誕生したんだ」みたいな。

 トゥーフェイスなんてそのまま出したらジョーカー以上にマンガ臭いキャラ造形なんですが、これなら納得ってところでしょう。

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 物語のトーンは終始シリアスな緊張感に満ちたまま進行します。

 そして、常に「正義とは何か」を揺さぶられ続ける登場人物と、そして観客たち…という構図。
 この映画でジョーカーを演じたヒース・レジャーが余りにも役に入り込み過ぎて精神を病み、睡眠薬の過剰摂取で急逝したのは良く知られています。

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 全く何の解決にもなっていない渋すぎる余韻を残すラストカットなど、大半の観客が「こ…これは傑作だ…」と思わず言わずにはいられない重厚な作品です。
 少なくともそう見えます(笑。観終わった直後とかには。

 今回はテーマについては一切触れませんけど、この映画の最大のポイントは「大ヒットした」ってことでしょう。

 もう古い表現ながら「立ち見が続出」の超・超大ヒットでそれこそ「ジョーズ」だの「スター・ウォーズ」だの「タイタニック」だのがひしめく「売り上げ歴代ベスト10」にすら顔を出す大ヒットを記録したんです。

 『こんなに暗い映画がヒットするなんて、今のアメリカは相当病んでるんだな』なんてことも言われました。

 何しろ「語りたくなる」映画なんで、つき合わされるデート相手のお嬢さまがたには気の毒ではあります。



 ちなみにその後、ヒーローってのは悩まないといけないと言うことになった訳でもないんでしょうが、どうもアメコミ映画ってのはうじうじしている傾向が生まれました。

 渋く重厚にすれば面白くなるって訳じゃありません。そこを勘違いしちゃいけない。

 実際「マン・オブ・スティール」とか

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「スーパーマン対バットマン ジャスティスの誕生」

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とかも基本はうじうじ路線なんですが、まあ悪評さくさく。「ジャスティス〜」に至っては「映画秘宝」の年間トホホベスト1に選出されてしまうほど。


 一方、ライバルであるマーベルの方はお馴染み「アイアンマン」

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が陽気で明朗なキャラだったこともあって、彼らが集合する「アベンジャーズ」

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では、コッテコテの娯楽大作として観客を魅了したのでした。

 まあ、調子に乗りすぎて「日本よ、これが映画だ」なんてコピーを打っちゃってバッシングされたりもしましたが。

 彼らマーブル組(Xメンたちはまた別かな)が「陽」だとすれば、「ダークナイト」は正に「陰」側の代表傑作と言えるでしょう。


 大作気取ってか長いし、暗い映画なので万人に薦められませんけど、アメコミ原作なのに渋くて重厚な考えさせられる映画を観たいならこれでしょう。

 映画なんてのは見た目が問題なんじゃありません。正に「中身」こそが問題視されるべきです。確かにマンガみたいな恰好した奴が活躍する映画ではあるけど、「訴えるべきテーマ」はしっかりあるんだから。

 きっと淀川長治氏が生きていてこの映画を観たら…前半での侵入シーンとか丸々いらんとか、色々怒られもするけど…、最終的には褒めてくれるんじゃないかな。

淀川長治 究極の映画ベスト100〈増補新版〉 (河出文庫)
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↓黒家カイミ追記。「ダークナイト」をついに観てしまいました。これ単体でも楽しめましたよ。
冒頭の銀行強盗シーンが一番好きなんですが、シブいと主人に言われたけど、そう?一番痛快で(悪いことしてるんだけど)アクションも面白かった。
同じ監督の作品ということで「バットマンビギンズ」から続けて2本観たのに、まだまだ知らない前提がたくさん必要だったのと、レンタル時にいろんなタイトルでいろんな人が作ってるので、探しにくいよ!!という所にイラッとしました。今度調べてリスト作ってみよう。
「ダークナイト」のジョーカーは、「メイクの崩れていく感じ」と「狂気度が増していく感じ」がリンクして汚な気持ち悪さ満開で素晴らしいと思いました。バットマンの方はジョーカーがインパクトありすぎてあんまり印象に残らなかった・・・。もっと「バットマンビギンズ」みたいにコウモリ呼び寄せたりして戦って欲しかったな〜。

それと、ホントに好みの問題なんだけど、ティム・バートンのバットマンの方が明るくバカバカしくて好きです。みんなジョーカーの顔になっちゃうアホらしさや、バットマンが金にモノをいわせてるヒーローらしからぬ感じが良かった。(ホントに好みの問題なだけで、どちらの良さもあると思います〜!)


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