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映画「アリゾナ・ドリーム」を観た(ブラックウッド)

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【アリゾナ・ドリーム】
上映時間:2時間22分

1993年 アメリカ、フランス
(日本公開は1994年)
監督:エミール・クストリッツァ

出演:
ジョニー・デップ
ジェリー・ルイス
フェイ・ダナウェイ
リリ・テイラー
ヴィンセント・ギャロ
音楽:ゴラン・ブレゴヴィッチ
撮影:ヴィルコ・フィラチ

内容:
ニューヨークの漁業局で働くアクセル(ジョニー・デップ)は、アラスカでオヒョウを釣ることを夢見ていたが、叔父の結婚式の為に故郷アリゾナへ行く。キャデラックのディーラーをする叔父の手伝いを始めたアクセルは、そこで夫を射殺した過去を持つ未亡人(ジェリー・ルイス)と出会い彼女の家に住み込むことになる。未亡人は鳥に憧れ、飛行機作りに熱中していた。未亡人と関係を持ちながら、亀になりたい自殺願望癖の娘(フェイ・ダナウェイ)と恋に落ち、それぞれの夢を抱いた人々は、自ら破滅の道を辿り始めるが……。

フランスのプロデューサーの製作でアメリカを舞台にアメリカ人のキャストで監督したフランス映画。
アリゾナを舞台に失われたアメリカン・ドリームへの郷愁を幻想的に描き、ベルリン映画祭銀熊賞受賞した。
ジョニー・デップの出世作。

脚本はクストリッツァ監督がニューヨークのコロンビア大学映画学科で講師をしていた時の生徒のひとり、デイヴィッド・アトキンスのオリジナル。


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 「アンダーグラウンド」でお馴染みのエミール・クストリッツァ監督の作品。

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 ちなみに「アンダーグラウンド」を撮るのはこの後なんだとか。

 地元のユーゴスラビアあたりを舞台にした全く西側の一般観客には馴染みの無い舞台と登場人物で語り倒す、音楽と歌、ダンスに満ち溢れた「民族映画」みたいなのを得意とする…っていうかそういうのしか撮れない(いい意味で)監督なんだろうな…と思ってたんですがかなりイメージが違って驚きました。

 まだブレイク前でぴっちぴちに若いジョニー・デップや渋い大人の魅力のジェリー・ルイスやら、「有名俳優」ばかりを主役級に起用した映画なんですね。

 とはいえ、内容は中々に難解。

 登場人物たちはそれぞれ魚、亀、鳥になって生まれ変わることを夢見ていて、特に理由もなく死にたがっています。

 この組み合わせに意味があるのかどうかは良く知りません。あちらでいう「犬、猿、雉(きじ)」とか「一富士、二鷹、三茄子(いちふじ、にたか、さんなすび)」みたいな定番の組み合わせなんでしょうか。

 冒頭のエスキモー(イヌイット)を思わせるシークエンスがほぼ本編と絡まないのが驚き。てっきりエスキモーの方々が主役の映画だと思っていたので。

 劇中でかなりの人物が死亡しますがほぼ自殺です。

 エロス(生命力)の反対はタナトス(死への渇望)で、そういった映画に一定の魅力があることは良く分かります。

 いつだったか観た「マッチ売りの少女」がムチャクチャよく出来ていました。確かアニメでした。

 ストーリーは皆さんご存じでしょう。寒空の下、不幸な生い立ちのマッチを売って生活費を稼がされている少女が余りの寒さに売り物に手を付けて、一本擦るごとにこれまでの人生の思い出を振り返るのですが、結局凍死してしまいます。

 翌朝、少女の亡骸を前に泣き崩れるクソ親父の白々しさに観客全員が激怒ですよ。

 ただ、余りにも凄まじいことに、少女は死に際に「嗚呼、やっと死ねる」ととても嬉しそうなんですね。
 現実が余りにも辛すぎるため、「死ぬこと」は寧(むし)ろそこから解放されることでもあるのです。

 タナトス描くならこれくらいはやって欲しかった。

 この映画の登場人物たちの「死への渇望」はテーマに沿ったものなんだろうけど、観客に「そうだよな。そりゃ死にたくもなるよ」とまで積極的に思わせようとしておらず、なんというか「言葉だけ」で上滑りしています。

 というかハッキリ「何で?」としか思えません。

 私はそこまで思いませんでしたが、人によってはそれこそ「何を訳の分からんことを!甘えるな!」と一喝するかも。

 これ以上は話の根幹に触れるためストーリー説明はこれまで。

 ただ、よく言われる様に後半になってくると「クストリッツァ監督らしさ」が少し出てきて、鳴り続ける音楽を背景に色んなものをぶっ壊しながら(笑)、畳み掛ける様に展開します。

 何故かCG処理で空中を「魚」がふわふわ泳ぎます。

 これ、私だけかもしれませんがSF小説の「ニューロマンサー」を思い出しました。

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 「サイバー・パンク」小説の元祖ともいうべき歴史的作品。

 これが無かったら「サイレントメビウス」とか「攻殻機動隊」は生まれていないでしょう。

 というか「電脳にダイブする」みたいなのの最初の小説と思って下さいませ。

 あれですわ「マトリックス」みたいな感じです。

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 この中で、脳をハッキングされて妙なビジュアルイメージが浮かぶ様になってその辺の空中を魚が泳いでいる様に見える場面があります。

 ま、それだけなんですけどね。

 「電脳コイル」を思い出した人は1マカオポイント上げます(何に使うんだよ)。

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 恐らく「アンダーグラウンド」でクストリッツァ監督にハマったであろう人が大量の激賞レビューを付けてます。中には「生涯最高の映画!」とか褒めている人も。

 私も「アンダーグラウンド」のパワーには圧倒されたクチですが、そこまではハマらなかったなあ。

 話のタネにはいいんじゃないでしょうか。


***

黒家カイミ追記です。

以前から観ようと思って観そびれていた映画を夫婦で鑑賞。

う〜ん、、これは難しい大人の寓話を描いた映画、なのかな?
何となく、この映画の持つ空気感を楽しむような感じのお話かな・・・と思いました。

魚が空中をフワフワと泳ぐ。

未亡人とアクセルの飛行機作り、ついに未亡人が空を飛ぶのですが、どのシーンも、それぞれの「夢」の中身を観ているようなお話に感じました。

主人公アクセルが最後に恋する娘は、椅子が空中に浮かび上がる・・・(←このシーンがクストリッツア監督らしくて好きです)・・・。

現実に「そこにある感じ」ではなく、どれも空中を泳ぐ魚のようにフワフワとしてるような感じ。

主人公は魚、未亡人は鳥、自殺願望のある娘は亀に憧れがあり「それになりたい」という願望もあるようです。
それぞれの「憧れの生き物」は別の所で生息するものですし、この物語が破滅の道を行く展開を想起させるものがあります・・・。

クライマックスは・・・娘にとっては破滅ではなく「幸せの絶頂」だったのではないかな?
そして幸せの頂点で留めておきたいと思ったところもあるだろうし、「彼女の夢」とも重なったところもあったのかもしれないなぁ・・・と思いました。

私の印象では、いかにもミニシアターで上映してそうな作品だな〜と思いました(何となく、懐かしい〜感じもしました。なぜか、郷愁をさそうような感じ?フランス映画だからかな)。
「何だか良い感じの空気感」な映画としては、なぜかジム・ジャームッシュの映画も思い出しました・・・。

はっきりと解りやすい映画も楽しいものですが、ちょっと解りにくいけれど、こんな映画も良いものです。

そんな「何だか良く解らないけれど、何だか良い感じの空気感」を楽しむのが好きな人・・・クストリッツア監督の違う一面を観たい人・・・そして若くてピッチピチのジョニー・デップを堪能したい方にもオススメかも(笑)。

「シザー・ハンズ」でジョニー・デップを好きになったので、こんなに正当派なイケメンなんだなぁ・・・とあらためて思いました。私の印象は、ティム・バートン監督と一緒に映画を撮っている「白塗り俳優」のイメージだったもので・・・。

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